「サザエさんの年金」ってどうだったんだろう?/戦後に激変した性別の役割、家族のあり方、働き方と年金の現在地

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これは、先人たちが「氾濫する川」があったから「堤防」を築いた結果である。

貧困をはじめとした生活問題を生む賃金システム(=氾濫する川)があったから、氾濫を防ぐために賃金のサブシステムとしての被用者保険を作った。この被用者保険中心の社会保険制度は、貧困を防ぐのになかなか頑強な構造である。

私たちは、より多くの人たちが、この被用者保険によって人生を守られる社会を、次の世代に残していかなければならないとも思う。分布推計は、そうしたことを、私たちに考えさせてくれた。

「サザエさんの時代」でない私たちの年金制度改革

最後に、10月に開かれた年金学会シンポジウムでのまとめ「年金とライフスタイルの統合――勤労者皆保険の完成度向上とWork longer戦略」を紹介しよう。

年金政策として筆頭に考えるべきこと
  • ●高齢期の生活保障の柱となる年金政策とライフスタイルの変化の政策的な統合を意識する。
  • ●介護、子育てと仕事の両立支援を一層充実する。
  • ●ジェンダー平等な社会を目指し、男女間の賃金格差に起因する年金格差の解消を目指す。
  • ●65歳以降の雇用確保
  • ●若返り・寿命の延伸と労働力の希少化を反映した無理のないWork Longerにより、将来の公的年金給付は下がらないことを議論のスタートとする。

ここには、「給付引き上げ」といった言葉はなく、「将来の公的年金給付は下がらないこと」が議論のスタートとなっている。世の中で言われている年金悲観論とは随分とイメージが異なるかもしれない。

だが、公私にわたる年金制度に詳しい専門家たちが、事実に基づいて年金のこれからを考えると結局のところ、高齢期の生活保障は、若返った日本人の無理のないWork Longer戦略に落ち着く。

これからの年金改革も、日本人のライフスタイルの変化と若返りを踏まえて、Work Longer戦略と矛盾する制度の見直しに優先順位が置かれることになる。

権丈 善一 慶應義塾大学商学部教授

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けんじょう よしかず / Yoshikazu Kenjoh

1962年生まれ。2002年から現職。社会保障審議会、社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議委員、社会保障の教育推進に関する検討会座長などを歴任。著書に『再分配政策の政治経済学』シリーズ(1~7)、『ちょっと気になる社会保障 増補版』、『ちょっと気になる医療と介護 増補版』など。

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