「過剰な便乗値上げ」で利益率が急上昇 日本企業の"強欲"がリフレ政策を台無しにする≪グリードフレーション≫の罠

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実際、2012年度に発足した第2次安倍政権以降、日本企業の利益率は極端に上昇しています。2011年度の3.28%から6.78%へと高騰し、その中の中小企業の利益率も1.7倍に増え、史上最高を更新しています。

同時に、労働分配率も大幅に低下しています。法人企業統計では、2024年度の労働分配率は57.4%まで激減し、1975年度以降の過去平均62.8%を大幅に下回っています。

結果として、アベノミクスは、企業の利益率の上昇とそれに伴う内部留保の激増によって、リフレ政策の需要が企業に吸収され、経済成長につながっていないという状況になりました。

賃上げは政府が先に手本を

高市新総裁がアベノミクスを継続するとなれば、企業の利益率高騰や労働分配率の低下に対し、どのような政策を打つかが、リフレ政策が成功するか否かの最大のカギとなります。

安倍政権、菅政権、岸田政権は、最低賃金の積極的な引き上げも含めて賃上げを促進してきました。

高市政権にも、経団連、経済同友会、日本商工会議所などに対し、今まで以上に継続的に賃上げの促進を求める必要があります。企業は減益になると賃上げはしませんが、中小企業も含め、増益になっても最高利益になっても賃上げに積極的ではないのが、第2次安倍政権以降の特徴です。

同時に、公的部門の賃上げや公共料金の引き上げも必要です。企業に賃上げを求めるならば、教員、自衛官、警察官など公務員の賃上げも含め、政府がお手本を示すべきです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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