ピケティも絶賛! 革命的著作「緊縮資本主義」の衝撃 日本をも蝕む「緊縮」と「支配」と「格差」の関係
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ベストセラー『21世紀の資本』著者として知られるトマ・ピケティ氏。彼が「歴史政治経済学の最高傑作」と絶賛する書とは(写真:NurPhoto/Getty Images)
世界中の研究者が注目する話題の書、『緊縮資本主義:経済学者はいかにして緊縮財政を発明し、ファシズムへの道を開いたのか』(クララ・E・マッテイ著)が上梓された。原著の刊行以来、センセーショナルに取り上げられ、経済学、政治学、歴史学の各界から高く評価されるその驚愕の内容とはいったいどのようなものなのか。歴史研究の枠にとどまらず、分断化、保守化する現代の社会にも大きな問いを投げかけるクララ・マッテイ氏の分析と主張を解説する。
緊縮がファシズムを招いた
「倹約家で厳格、中立公平だと思っていた賢父が、じつは悪の総帥だった」
そんなことがもしあればきっと驚くと思うが、そのようなことが国家レベルで実際にあったと主張する経済学者がいる。
新進気鋭の経済学者クララ・E・マッテイは、緊縮資本主義がファシズムを招いたと言う。
しかもたまたまそうなったというのではなく、ファシストがファシズムのために半ば“意図して”そうしていた、というのである。
一聞してそんなわけがないと思う人がほとんどだろう。私もいまもって完全には信じることはできていない。
本人もそれは承知の上のようで、マッテイはこのように序文で述べている。
歴史を新たな視点から語る上で懸念されるのは、それらが作為的、あるいは党派的として退けられる危険である。何より私自身が経済学者であって、それらをすっかり拭い去れないために、末尾には資料の渉猟過程と理論を裏づける定量分析の章を設けた。【中略】歴史経緯によって説得されてくれない読者も、最終章がその効果的な役割を果たしてくれるものと期待する。(『緊縮資本主義』)
マッテイが言うことは果たして本当なのか。まずはその主張を追っていこう。
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