ピケティも絶賛! 革命的著作「緊縮資本主義」の衝撃 日本をも蝕む「緊縮」と「支配」と「格差」の関係
緊縮はファシズムを促進するというのは飛躍があるのではないか、緊縮はそもそも経済学的にはリベラリズムに属するものであって、自由主義を是とし、政府の介入を嫌うものではないか。政府の独裁たるファシズムを促進するとは考えにくい、という疑問がある。
それに対してマッテイは、“資本家の”自由を守るという点でリベラリズムと圧政は矛盾せず、むしろそのために国民の多数派である労働者を困窮させ自由を奪い“おとなしく”させておくために緊縮は有効であり、その目覚ましい効果はファシストをも魅了するのだという。
これは私から補足すると、全体主義の研究で高名な政治学者ハンナ・アーレントは、全体主義はテロル(恐怖政治)によって連帯を奪い、個人の内面の自由さえも奪うことによって完成すると言う。ナチスは全体主義の完成のためにテロルを使ったが、イタリアのファシストは「緊縮」を手段として使った、ということのようだ。
「脱政治化」された「純粋経済学」による緊縮で目的を巧妙に隠しつつそれは行われたのだという主張には、逆説的な意外性とともにファシズムの底知れない恐ろしさを感じさせる。
このあたりの分析はマッテイの歴史政治経済学者としての真骨頂だろう。
2人の評価者「ピケティ」「バルファキス」
ファイナンシャル・タイムズの2022年ベストブックにも選ばれているマッテイのこの著作に関しては、たくさんの研究者たちが関心を寄せている。
その中にはトマ・ピケティやヤニス・バルファキスといった大物もいて、その内容を絶賛している。
『21世紀の資本』と「r>g」で有名なトマ・ピケティは理論家、歴史家として当代随一の経済学者であることは皆が認めるところだろう。その彼がクララ・マッテイの本書を「歴史政治経済学の最高傑作」と絶賛している。
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