ピケティも絶賛! 革命的著作「緊縮資本主義」の衝撃 日本をも蝕む「緊縮」と「支配」と「格差」の関係
痛めつけられた労働者階級は従順となり、支配層は自身の影響を及ぼすことが容易となった。そして困窮が進むと、労働者は短絡的となり分断が自律的にも作用していき、それは独裁者やオリガーキー(寡占階級)に非常に都合のいいことだった。
とくにイタリアではムッソリーニのようなファシスト政治家が台頭してきていたこともあり、ファシスト(全体主義的、権威主義的、排他主義的な独裁者)による「緊縮」が好んで行われ、さらに独裁体制を強化することにつながったとマッテイは主張する。
大まかに3つの概念とそのつながり、彼女の主張を説明してみたが、賛否はともかくとしてもまったく理解ができないということはないのではないだろうか。
3つの緊縮
そして本書が経済学界に驚愕をもって知られることになった、「3つの緊縮」の分析とその効果を概観していきたい。
・財政緊縮
・金融緊縮
・産業緊縮
まず、わかりやすいのは「財政緊縮」だろう。
医療、公教育、失業手当といった社会保障費をカットすることで財政支出を抑え、それまであったセーフティネットを提供しないことで労働者(つまり大多数の国民)を不便にし、心理的に不安にさせた。
このような方策は当然に大きな反発があるのだが、財政健全化や自己責任論を是とする経済学者によって正当化の理論が展開され、テクノクラートらによって強制執行された。また、税制的にも逆進課税を採り、労働者階級の蓄えを削ぎ、資本家の資本蓄積を促進させた。
次に金融緊縮だが、これは財政緊縮よりもテクニカルで国民にはわかりにくく、実行に際しては抵抗も少なく行いやすかったようだ。
金融引き締め策は、政策金利の引き上げ、金本位制導入などで行われ、「通貨の健全化」といった理論で正当化された。
通貨量を絞ることによって金利は上昇し、デフレが進行しやすくなり、経済活動は滞りがちとなり、失業が増えやすくなる。労働者は不況のあおりを受けて失職を余儀なくされるが、誰のせいにしていいかわからない。その時には失業保険もない、といった財政緊縮との相乗効果もあった。
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