ピケティも絶賛! 革命的著作「緊縮資本主義」の衝撃 日本をも蝕む「緊縮」と「支配」と「格差」の関係
マッテイが主張する「緊縮資本主義がファシズムを招いた」という驚くべき説は、具体的にどういうことなのか? そのカギとなるのが、本書の根幹をなす3つの概念だ。
・capital order 資本秩序
・fascism ファシズム
「緊縮」「資本秩序」「ファシズム」
「ファシズム」は政治学や歴史学でよく目にするタームであり、知っている人も多いだろう。「緊縮」に関しては経済学タームで、経済学を学んだことがある人であれば知っていると思う。「資本秩序」に関しては、これはマッテイが提出しているものであり、初見の人が多いだろう。
マッテイは、本書で、「緊縮」が「資本秩序」を守り、それによって「ファシズム」に道を拓いたと主張している。どういうことか。
彼女はまず、経済学者によって「緊縮」が行われた歴史的事実を重視する。緊縮とは、国が財政政策や金融政策、そして産業政策を「やらない」あるいは「締めつける」ことだ。それにより国民は医療などのサービスが受けにくくなったり、自身の貯蓄が減ってしまう。第1次世界大戦の前後を契機にして、それは意識的に行われたという。
ではそれがなぜ行われたかというと、「資本秩序」を守るためだと彼女は言う。マッテイが言う資本秩序とは大まかに言えば、資本家と労働者の階級ヒエラルキーのことで、つまり上位者階級である資本家を守ろうとしたためだという。
第1次世界大戦を契機に、労働者は力を持ち、資本家と伍するかその階級的立場を逆転させようとする(すなわち“革命”の)自信を身につけていた。
それに危惧を抱いた“勢力”が、「緊縮」を用いて労働者を“おとなしく”させ、「資本秩序」を維持したと言うのである。
その“勢力”とは、資本家、政治家、テクノクラート(官僚)で、実施に際してはいろいろな理由がつけられながらもその緊縮の方向性は一貫していたという。
その“方向性”に疑問を持ちつつ歴史資料を渉猟し、時にオブラートに包み隠されながらも明確な意図として「資本秩序の維持があった」のだとマッテイは確信する。
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