「ない袖は振れない」は本当か 貧しい人々から富裕層へ富を移転する「緊縮効果」という名の罠 「財政再建」の裏にある「不都合な真実」

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アイゼンハワー大統領時代(1953〜61年)に91%だったキャピタルゲイン税や法人税は、2021年現在では37%にまで引き下げられた。トランプ政権は2017年に法人税を35%から21%に引き下げたが、これは1970年代の50%から見れば顕著な変化だ。

アメリカの賃金は数十年にわたって低迷している。現在、史上初めて、アメリカの最富裕層400世帯が支払う税率は、総じて他のどの所得層よりも低くなっている。

近代資本主義の柱だった「緊縮策」

緊縮策は目新しいものではなく、1970年代後半のいわゆる新自由主義時代に生まれたものでもない。第二次世界大戦後30年足らずの好況期を除けば、緊縮策は近代資本主義の柱であったとさえ言える。

資本主義が存在するところには危機がつきまとうのは、歴史に一貫して見られる真実だ。緊縮策が力を振るうのは、このような「自称」社会変革の瞬間において、資本主義のヒエラルキーを守るためである。

緊縮策は資本主義の守り手であり、その切れ味から国家間で人気があり、「効率」を高めて経済を「修復」する手法として宣伝されている。これは「長期利益のための短期再調整として」行われるのだ。

政治学者のマーク・ブライスは、著書『緊縮策という病』の中で、緊縮策が歴史上、目標(債務削減や経済成長促進など)の実現の観点から必ずしも「うまくいってきた」わけではないのに、政府によって性懲りもなく採用され続けてきた事実を明らかにしている。

ブライスはこの強迫的なパターンを「狂気の一形態」と呼んでいる。

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