「フィリピン貧困層の学生をヒーローに」NPOの夢/10人が大阪万博を訪れ、日本の若者らと交流/フィリピン社会の実情と子供たちの輝く瞳

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9月に大阪・関西万博を訪れた日比の若者たち(写真提供:DAREDEMO HERO)

フィリピンの貧困家庭出身の高校生や大学生10人が2025年9月20日、大阪・関西万博を訪れ、日本の若者と交流した。飛行機に乗るのも電車に乗るのも初めて。見るものすべてが新鮮で多くの学びがあり、将来の夢が膨らんだ。一方、日本の若者も大いに刺激を受け、日比の違いやそれぞれの課題を見つめ直す機会になったという。

訪日したのは、フィリピン中部セブ州を拠点に教育支援を行う日本のNPO法人「DAREDEMO HERO」(内山順子理事長)の奨学生たち。15歳から21歳までの高校生と大学生だ。今回は1970年大阪万博の収益金を運用する日本万国博覧会記念基金から100万円の助成金が出た。不足分を補うために50万円の目標を掲げてクラウドファンディングを実施したところ110万円が集まり、研修旅行が実現した。

日本の若者とともにパビリオンを見学

奨学生10人は9月19日に関西空港に到着し、翌20日に万博会場を訪れた。その日の夜に支援者らを交えた報告会を大阪市中央区で催した。21日には協賛企業で研修を受け、22日にはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を楽しみ、帰国の途についた。

物見遊山に終わらせず日比の社会的課題について考える旅にしたいと考えたDAREDEMO HEROは6月、「フィリピンのユースと共に考える未来」と題して、万博を一緒に訪れる日本の若者を募った。これに応募した13歳から23歳までの日本人19人と奨学生10人が「健康」「SDGs」「AIと科学技術」の3テーマでグループに分かれ、出発前にオンラインで討論を重ねた。

報告会後での記念撮影。フィリピンの民族舞踊も披露された(撮影:柴田直治)

万博で参加者らはフィリピン館、シンガポール館、パソナ館、クラゲ館、国際赤十字・赤新月運動館に入場することができた。夕方、報告会の会場で素早くパワーポイントで資料を作り上げ、3チームがそれぞれのテーマでフィリピン側の見方と日本側の視点を紹介するプレゼンをした。フィリピンから参加者は練習を重ねた民族舞踊を最後に披露した。

初めて尽くしの体験に、奨学生らは高揚した表情をみせていた。日本の印象を聞くと、街の清潔さとゴミの少なさ、行列の並び方や交通機関の効率の良さなどを口々に称賛した。自販機の多さに驚いたという感想やフィリピン館の展示に誇りを感じたとのコメントもあった。

街を歩けば若者の少なさと老人が多さに気づいた。事前学習で学んだ日本の少子高齢化を実感したという。「子供や若者が多いフィリピンとお年寄りが多い日本はお互いに助け合えるのではないか」と話す若者もいた。

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