「フィリピン貧困層の学生をヒーローに」NPOの夢/10人が大阪万博を訪れ、日本の若者らと交流/フィリピン社会の実情と子供たちの輝く瞳
日本の参加者も10人との出会いに大きな刺激を受けたようだ。奈良県立国際中学3年の古島由悠さん(15)は5歳のころ、父親に連れられてセブ島のDAREDEMO HEROの事務所を訪ねたことがある。その縁で今回応募した。
ジョーク好きでフレンドリーなフィリピンの参加者と、おとなしめの日本人参加者とのキャラの違いやバックグラウンドの差などが興味深かったと話す。パビリオンのなかでは得意の英語を使って説明役を買って出たことで、言葉が通じることに自信を持ったという。
選び抜かれた「ヒーロー」の候補たち

DAREDEMO HEROは2013年の設立以来、セブでゴミ山や墓場をねぐらとする人たちへの支援、日本との文化交流などの活動を展開するが、最大の目標は貧困地区から未来のリーダーを生み出すことだ。それが「ヒーロー」の意味である。
そのために貧困家庭から選抜した小学3年生から大学生までの60人に学費、制服代、教材費、学用品のほか、生活費補助や学習に必要な通信費用も卒業するまで支給している。毎週土曜日には昼食を提供し、教員資格を持つスタッフがパソコン、英語、日本語を教え、道徳教育も実施している。
毎年5人の奨学生を新たに選抜する。2つの小学校から成績優秀な児童が100人ほど推薦される。面接で将来の夢について聞き、きちんと答えられる子、夢や目標が自分本位ではなく利他的であることなどを基準に絞り、さらに教育に対する理解が親にあるかどうかを家庭訪問で確かめる。狭き門であり、優秀かつ熱意を持った子供が選ばれる。
DAREDEMO HEROの支援は、貧困世帯に薄く広くではなく、対象を絞って徹底して支えることで他の援助団体とは一線を画している。内山理事長は「がんばれば成功する例を示すことでインパクトを残したい。身近に成功例があれば、他の多くの若者も夢がかなうと信じることができる。フィリピンの社会を変えるリーダーが生まれることを手助けしたい」と話す。来日した10人も選び抜かれた「ヒーロー」候補である。
20日の報告会でエラ・ミノアさん(19)は日本語で締めくくりの挨拶をした。小学2年生で奨学生となり、週1回日本語を学んできた成果だ。現在英語教師をめざして大学で学ぶ。4人家族。父は塗装工だが、大学の学費は支援がなければ賄えない。将来、日本で英語を教えることが夢だ。
ロールモデルがいる。今年初めて大学を卒業した奨学生の1期生3人のうち1人が外国語指導助手(ALT)に採用され、日本で英語を教えているのだ。
あとの2人は世界最大のコンサルティング会社アクセンチュアなど優良企業に就職した。アメリカやフィリピンのパイロット養成学校を卒業した先輩もいる。
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