コスパ重視、職場で「ファスト・スキル」求める若者 働く若者が抱える「挑戦と保身」のジレンマ

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若者が抱える「挑戦と保身」というジレンマの実態を明らかにする(写真:mits/PIXTA)
会社は自分に何をしてくれるか――。今、職場でこう考える若者は多い。その背景には、知識やスキル、能力の取得に対する「ファスト化」があると指摘するのは、令和の若者を研究する金沢大学教授の金間大介氏だ。本稿は、金間氏の著書『静かに退職する若者たち』を一部抜粋・再構成のうえ、若者が抱える「挑戦と保身」というジレンマの実態を明らかにする。

今の若者が会社を辞める4つの理由

いま現在、体調不良やパワハラ被害、ブラック企業からの脱出などの理由を除き、若者が退職を考える今風の理由は、大きく分けて4つある。

1つ目は、当然のことだが、仕事は楽しいことばかりではない。多くの若者は、「普通の職場環境」「普通の待遇」「普通の上司」を想定し、職に就く。そして、自分がそれまで「普通」と想定していたことが、実は極めて恵まれた「天国」だったことを知る。

現実は「理不尽な職場環境」「不公平な待遇」「意味不明な上司」の3貫セットだ。これらが1つか2つある程度が「普通」であり、毎日ギリギリのところでがんばる。事前の想定が甘い人ほど、このギャップを強く実感することになる。

2つ目は、「ゆるブラック」企業からの退職だ。日本企業の多くは、残業を含めた労働時間を着実に減らすとともに、ハラスメントへの対策を強化することで、職場を働きやすくクリーンな場に変えてきた。

もうどの職場でもタバコをぷかぷか吸うことはないし、若手女性社員を「カワイ子ちゃん」と呼ぶこともない。新人がピッチャー片手に上司にビールを注いで回ることもないし、「24時間戦えますか」というセリフは、一周回ってむしろカッコよく聞こえるくらいだ。

が、そんな全国クリーン化計画が、逆に一部の若者にとっては「成長」の機会が奪われていると感じられるわけだ。

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