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〈インタビュー〉金融庁が指摘した"運用業界の闇"。改善はどこまで進んだのか。監督局に誕生した資産運用課の初代課長を直撃

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永山玲奈・金融庁監督局資産運用課長
永山玲奈(ながやま・れな)/金融庁監督局資産運用課長。2003年東京大学法学部卒、金融庁入庁。監督局銀行第一課課長補佐、総務企画局政策課・総務課課長補佐、OECD日本政府代表部一等書記官、金融庁企画市場局市場課市場企画管理官などを経て、2022年7月総合政策局国際室長。2024年7月総合政策局参事官兼監督局資産運用参事官。2025年7月から現職(撮影:尾形文繁)

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資産運用立国の実現に向けて、資産運用業が金融業の中で銀行・保険・証券に並ぶ「第4の柱」と位置づけられる中、金融庁監督局に資産運用課が7月に発足した。

同庁は2023年4月に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2023」で、運用会社が販売会社の回転売買を支援する「下請け製造」状態にあることや、乗り換え商品として投資信託を乱造した結果、小規模かつ運用成績が振るわない「不芳ファンド」が数多く残されている実態などを指摘した。
こうした状況は改善されているのか。資産運用サービスの高度化に向けてどのような課題が積み残されているのか。資産運用課の初代課長に就任した永山玲奈氏を直撃した。

――金融庁監督局に、資産運用業を監督する資産運用課が新たに発足しました。

金融庁は以前から貯蓄から資産形成への流れを推進してきたが、足元の目標である資産運用立国の実現においても、資産運用業の役割は極めて重要だ。回転売買が行われていたようなビジネスモデルから脱却し、投資家に対して責任を負う自立した存在として、顧客の最善の利益を追求していく必要がある。その実現に向けて金融庁も資産運用課を新設した。

新たな監督体制は、証券課の下にあった資産運用モニタリング室を資産運用参事官室として独立させた1年前から始まっている。金融商品取引法上の資産運用業者だけでなく、DB(確定給付企業年金)やDC(確定拠出年金)を含めて資産運用サービスを提供する金融機関を幅広くモニタリングしている。

資産運用課では引き続き法令遵守などの監督業務は継続しつつ、同時に関係者と幅広く対話し、資産運用サービスの高度化に向けた課題の抽出や考えうる対応策の検討も行っていく。われわれも最初から答えを持ち合わせているわけではないので、まずは話をうかがいながら課題を抽出し、方向性を検討していきたい。

かつては販売会社の下請け製造

――プログレスレポート2023で金融庁は、日本では投資信託の設定当初に純資産額がピークを迎え、その後は右肩下がりで落ちていく実態を指摘しました。このことは販売手数料を稼ぐ回転売買の疑いを示唆しますが、改善は見られますか。

確かに、かつては回転売買を行う販売会社の都合に合わせて売りやすい「乗り換え商品」をつくる、下請け製造のような運用会社もあった。

金融庁はこれまで、回転売買などの顧客本位でない行為を継続的に指摘してきた。今では回転売買を前提とした露骨な商品づくりや、販売会社に言われるままに投信を組成するような慣行は是正されてきているのではないか。

その意味では販売会社も運用会社も、顧客本位を意識したビジネスモデルに向かおうとする変化がうかがえる。家計の投資動向を見ても、乗り換えではなく長期的・安定的に投資を継続する積み立て投資が根付いてきた。

ただし、大事なのはこうした変化が定着するかだ。今は回転売買を自粛していても、手数料が稼げず収益面で厳しくなれば昔のビジネスモデルに戻る可能性はまだ消えていない。よい方向への変化が定着するかどうかを注視していく。

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