iPadアプリで叶える「閉じ込め症候群」の解放、クラファンで資金調達、重度障害者の会話手段に

意識はハッキリしているのに、声を発せず、身体も満足に動かせない――。病気や事故によって、他者に自分の思いを伝える術を失った状態を「閉じ込め症候群」という。そんな境遇に陥った人たちが言葉を取り戻そうと、頼るのが「意思伝達装置」と呼ばれる機械だ。
ただ、その価格は40万~100万円ほどと高価。約9割を補助する公的な支援制度もあるが、自治体の審査に一定のハードルが残る。意思疎通を絶たれた患者の中には、“遷延性(せんえんせい)意識障害”(いわゆる植物状態)と誤認され、一生を病院の中で過ごす人もいるという。
こうした状況を打開し、必要とするすべての人に装置を届けるべく、iPad向け専用アプリの開発が進む。手掛けるのは、大阪府茨木市のベンチャー・アクセスエール。8月31日までクラウドファンディングで必要な資金を募っている。
ALSで亡くした父の無念
「コミュニケーションが取れるのは、人間として生きるうえで最低限の尊厳。一刻も早くアプリを完成させたい」
そう意気込むアクセスエールの松尾光晴社長は、元パナソニックの技術者だ。自身も筋萎縮性側索硬化症(ALS)で父親を亡くした過去を持つ。筋力の低下で寝たきりとなり、最期は会話もままならなかった無念から、意思伝達装置の開発にのめり込んだ。
旧松下電器産業で働いていた2003年、社内ベンチャーを通じて商品化にこぎ着けたが、2019年に生産終了となった。すると、ユーザーやその家族から「会話の手段がなくなる」との悲痛な声が殺到。これに応える形で独立し、アクセスエールを立ち上げた(詳細はこちら)。
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