コスパ重視、職場で「ファスト・スキル」求める若者 働く若者が抱える「挑戦と保身」のジレンマ

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もし仮に、パーソルの調査結果が言うように、多くの若者が日本や企業の未来に期待せず、主体的なキャリア形成を目指しているのなら、もっと元気でチャレンジ精神を持った若者が世に溢れていてしかるべきだ。

固定化された既存企業を破壊対象と見なし、新たなビジネスを仕掛ける若者が席巻してもおかしくない。だが現実としては、そのような若者はほんの一部に留まる。

簡単ではあるが、僕の中で検証した結果、導き出された考察はこうだ。今の若者は、多くの矛盾を内包したまま生きている。

今の若者を特徴づける4つの事実

彼らが、長引く低成長の日本の未来に危機感を感じていることは事実。

先輩世代と比べ、主体的なキャリア形成が大事だと思っていることも事実。

それと同時に、正解主義で、いち早く皆が思う答えを知ろうとすることも事実。

リスクの伴ったチャレンジはせず、周りの様子ばかりうかがった行動をしているのも、やはり事実なのだ。

『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』(PHP研究所)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

このように、一見相反するような概念を、今の若者は抱えたまま生きている。特に強いギャップとして存在しているのが、彼らの「認識」と「行動」の矛盾だ。

上で述べた4つの「事実」のうち、前者の2つは認識に関するもので、後者の2つは行動に該当する。

主体性が大事だと認識しつつ、自らチャレンジはしない。日本の未来に危機感を持ちつつ、行動は控えめで横並びの正解主義。

これでは、先輩世代の皆さんが混乱するのは当然だ。この「矛盾を内包する若者たち」は、現在、多くの調査結果において観測されていて、 僕も引き続き深耕したいと考えている。

金間 大介 金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授

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かなま だいすけ / Daisuke Kanama

北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、 東京農業大学准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。主な研究分野はイノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等。著書に『イノベーションの動機づけ:アントレプレナーシップとチャレンジ精神の源』(丸善出版)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)など。

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