
[著者プロフィル]大木 毅(おおき・たけし)/現代史家。1961年生まれ。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学。DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生として独ボン大学に留学。千葉大学非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、国立昭和館運営専門委員などを経て、著述業。著書に『独ソ戦』(新書大賞2020大賞)など
エルヴィン・ロンメル、ハインツ・グデーリアン、そしてエーリヒ・フォン・マンシュタイン(1887〜1973)。第2次世界大戦のドイツ国防軍を代表する3将軍である。本書は前2者の評伝に続き、シリーズの掉尾(ちょうび)を飾る。評伝といえば、書く対象への思い入れがたっぷり詰まった記述があるものだが、本書にはほとんどない。その理由は何か。
──膨大な注も含め約450ページ。書き上げるのにそうとう苦労されたのでは?
積もり積もったものを吐き出したというところでしょうか。
ただ、想定以上に時間と紙幅を費やしました。マンシュタインという人は、若い頃からエリート街道を驀進(ばくしん)し、閑職に就いたことがないのですね。だから、評伝として省略できるところがない。
髀肉(ひにく)の嘆をかこっていたのは、1944年に南方軍集団司令官を解任され終戦に至るまでの1年弱と、戦後の捕虜時代ならびに戦犯裁判で有罪となり拘留されていた8年くらいではないかと。もっともその刑務所暮らしにあってさえ、せっせと回想録の原稿を書き進めていたというほど「勤勉」なのです。
若い頃から、あいつは無能だから何とかしてくれ、という評判はまったくなかった。ただ、自分の仕事ぶりを当然だと思い、周囲にも同じ水準を要求するというふうで、部下からの評判はあまりよくなかったようです。近くにいたら、上にとっても下にとっても「嫌な人間」だったかもしれない(笑)。
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