〈政策を問う〉三菱商事連合の洋上風力「救済策」を持ち出す裏で「エネ庁が目を背ける」不都合な事実

三菱商事を中心とする企業連合が参画する洋上風力発電プロジェクトが混迷に陥ってからまもなく6カ月。参議院選挙も終わったことで、その「救済策」が具体的な取りまとめに向けて動き出すとみられる。遅々として決まらなければ、複数のプロジェクトが頓挫しかねないからだ。
三菱商事連合の前提となっていたのはFIT(固定価格買い取り制度)による売電だった。FITでは発電した分だけ、地域の電力会社に固定価格で20年間電力を売ることができる。
だが、世界的なインフレや円安で資材価格が高騰。相対取引で高く売電することはできないFITでは、入札時の想定を大幅に上回るコストを転嫁する余地がない。そこで、「FIP(フィードインプレミアム)」への転換という助け舟をエネ庁が出した。これはあらかじめ決められた「基準価格」と卸電力取引市場などでの「市場価格」との差額を国が補助する制度だ。
資源エネルギー庁と国土交通省がつくる合同審議会では、6月3日に「整理すべき論点案」が示された。FIP転換を認めた場合の他事業者との公平性や、FIP転換した場合にほかの洋上風力事業者に講じるべき配慮などが挙げられている。
だが、ここで注目すべきなのはエネ庁が「論点に盛り込まなかったこと」のほうだろう。それは大きく2点ある。三菱商事連合にFIP転を適用することが適切なのかという点。そして、そもそも公募ルールや審査制度に問題はなかったのかという点だ。
「低価格入札」がなかったことに
2021年12月、三菱商事連合はFITを前提にほかの事業者よりも圧倒的に安い売電価格を提示、このとき公募にかけられた3海域すべてを落札した(2022年2月4日配信の『三菱商事が洋上風力で価格破壊、「3海域を総取り」の内幕』を参照)。
「総取り」の決め手となったのが「低価格入札」だった。ところが今年3月にエネ庁が示した救済策の素案どおりなら、低価格入札はなかったことになる。そればかりか、逆に他事業者よりも手厚いプレミアムがつくことになる。

いわば、決まり手が無効となったにもかかわらず、勝者として君臨し続けるいびつな状況だ。6月3日の審議会では、再エネ大手のユーラスエナジーホールディングスが「この価格で事業を実施しないのであれば、そもそも高得点を受け落札した根拠が失われる可能性がある」と指摘した。
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