コスパ重視、職場で「ファスト・スキル」求める若者 働く若者が抱える「挑戦と保身」のジレンマ
そして4つ目は、会社は自分に何をしてくれるか、という考えが、若者の間で強くなっていることだ。今の若者は、会社あるいは経済社会を「固定化された仕組み」と見なす傾向が強い。というより、そういうものを理想としている、と言った方が近いかもしれない。
したがって、スキルや能力向上の機会についても、会社や上司が「仕組み」として用意すべきものであって、それがない(あるいは自ら作らなければならない)会社は理不尽だ、ということになる。
僕はこの背景に、知識やスキル、能力の取得に対する「ファスト化」があると考えている。
「おすすめの資格」を尋ねる若者の真意
大学教員として高校生(あるいは大学1年生くらいまで)と接すると、度々訊かれることがある。
「どんな資格を取っておくといいと思いますか?」(同業者の皆さん、あるあるって感じですよね)。
先日、入学したての大学1年生の前で、企業から内定をもらった大学3、4年生を集めた就職活動に関する座談会を開いたときも、Q&Aタイムで同じ質問が出ていた。
僕の場合、そういう質問を受けたときは、いったん、逆質問をさせてもらうと断ったうえで、「あなたの目標は何ですか? もちろん今の時点で」と訊き直す。
逆質問の形となっているが、これが事実上の僕の答えだ。つまり、「資格の有効性は目標による」。
極めて当たり前のことを伝えているわけだが、素直でまじめな日本の若者は、そうは捉えないらしい。逆質問の答えで最多となるのはこんな感じ。
「いや、特にまだ目標とかは決めてないんですけど、現時点で何かおすすめの資格とかがあればと思いました」
言い方は若者らしく、たどたどしいが、言葉づかいは丁寧だ。僕以外の多くの教員は、ここでいくつかの資格をあげるなど、何らかの回答をしてくれる。人によっては、自分の体験なども交えて話したりして、とても素晴らしい。
ただ、僕は原則を記憶に留めてもらうよう努める。資格はあなた自身の能力のほんの一部の証明に過ぎない。資格自体が決定的な武器になる時代ではない。少なくとも、資格が取れそうだから、という理由だけで進学先を選ばないでほしい。
結果的に突き放す言い方になるから、質問した新入生は少し苦い顔をする。それを見ながら話す僕のメンタルも、少し削られる。
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