豊かな日本社会で「心を病む人」が増えている理由 「エゴの連鎖」を止めれば心穏やかに生きられる
私たちは自らの欲望を簡単に満足させられる、かつてないほど便利な世界に生きている。一方で、人間関係が希薄となったため、心のつながりを感じられなくなったり、押し寄せる情報に翻弄され、自分が何を求めて生きているのか、わからなくなっている人も多いだろう。
4000万人ものSNSフォロワーを誇る作家、ポッドキャスターのジェイ・シェティは、僧侶となるべく修行を重ねた経験をもとに、自分らしく生きるためのメソッドを紹介し、世界中から熱狂的な支持を得ている。
世界30カ国以上で刊行され、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー1位ともなり、8月に日本語版が刊行されたシェティの著書、『モンク思考』。
今回、日本人にとって本書はどのような価値をもつ本なのか、日本ヨーガ瞑想協会会長の綿本彰氏に、話を聞いた。
なんでも思いどおりになる時代
私たちは、目の前で起きている現実を受け止めることが苦手になっています。
自然とともに生きていた数千年前ならば、雨が降れば狩りを休み、太陽が沈めば寝る支度をするなど、自然の摂理に従って生きていたでしょう。
文明が発展しても、まだスマホのなかった昭和の時代には、人と会うにもよほどきちんと段取りを決めておかなければなりませんでした。
それから急速に世の中は便利になり、なんでも思いどおりになる、いわば「環境が欲望を吸収してくれる」時代になりました。コンビニに行けば、世界各国のお弁当やデザート、文房具から下着類まで、数百年前の王様ですら手に入らなかったハイクオリティーのものが、低価格でいつでも誰でも気軽に手に入れることができます。
こういったコンビニ(便利)な環境によって、私たちは「お金さえ出せば自分の思いどおりになる」という価値観になってきていて、この価値観が、私たちの心を貧しくしてしまっているように感じています。
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