博士課程への生活費支援「日本人に限定・留学生は除外」が国益を損なう理由。そもそも“給与が出る”世界のスタンダードから日本は劣後

文部科学省は6月26日、博士課程の学生に年間で最大290万円の経済支援を行う「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」を見直し、うち最大240万円の生活費相当額の支給対象を日本人限定にして留学生を除外することを決めた。同日に開いた有識者会議で方針を示して追認された。
このSPRINGをめぐっては3月、自民党・有村治子参議院議員による国会質疑の中で、2024年度の受給者1万0564人中、4125人(全体の4割)が外国人で、かつ中国人が2904人(全体の3割)を占めることが明らかになった。有村氏は「国民の理解が到底得られない」として文科省に対し、変更を強く求めていた。
SPRINGは制度上の位置づけが「奨励金」ということもあり、国が「お金を出してあげている」印象になっている。元をたどれば税金であり、中国に対してマイナスの感情を抱いている人も少なくないことから、ネット上では「なぜわれわれの税金で留学生を支援しなければいけないのか」「日本人への支援を優先するべきだ」といった批判が高まっていた。
だが、優秀な人材の有力な進学先となっている世界の研究先進国と、日本の博士課程の状況を比較すると、今回の見直しはグローバルスタンダードから日本がますますかけ離れていくものであるという実態が浮かんでくる。
世界では給与が出るのが常識
世界では多くの国で、理系の博士課程には給与か、給付型の奨学金が出るのが常識になっている。アメリカ、フランス、ドイツや北欧諸国では、留学生に対してもそうしたお金が支給されるのが普通である。
博士課程は研究分野に関わる専門知識や研究のアプローチを学ぶだけでなく、研究論文を書いたり、所属する研究室などチームで研究を進めるうえで必要なリサーチをしたりしている。さまざまな形で大学の研究成果というアウトプットに貢献している。
世界の多くの研究先進国ではその対価がきちんと支払われており、学生はそれを生活費に充てているわけだ。
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