博士課程への生活費支援「日本人に限定・留学生は除外」が国益を損なう理由。そもそも“給与が出る”世界のスタンダードから日本は劣後

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しかし日本では、理系が博士課程の約7割を占めるにもかかわらず、大半の人に給与が出ていない。いわば「労働力搾取」のような状況になっている。

中には一部、リサーチアシスタントや、授業補助のティーチングアシスタントとして雇用されて報酬をもらえる人もいるが、枠は非常に少ない。また、日本学術振興会特別研究員などの経済支援制度もあるが採択率は低く、狭き門になっている。

文科省の調査によると、SPRINGが始まる前の2018年度では、日本の博士課程で生活費相当額(180万円以上)の報酬や経済支援を受けている学生は1割にすぎなかった。

博士進学の重大なネック

こうした状況を映し、SPRINGの公募要領の事業背景に関する記述では、日本の博士課程への進学の重大なネックとして「生活の経済的見通しが立たない」ことが挙げられている。大半の場合は給与が出ないのだから当然だろう。その結果として生活費のやりくりに苦労するのは、日本人でも留学生でも同じはずだ。

SPRINGの生活費支援には、世界標準から大きく劣後する日本の博士課程の厳しい経済環境を、多少は緩和する効果がある。それを今後は国籍で区切り、日本人の博士課程だけ受給対象とする変更は妥当なのだろうか。

7月1日の閣議後会見で、阿部俊子文部科学大臣に2つ尋ねた。まず「国籍で区切ることの理由や必要性は何か」について。

これに対し阿部大臣は、「日本人学生が博士課程に進学しない要因としては在学中の経済的不安があるのに対し、留学生は進学を目的に来日をしていて、私費留学の学生も多いことを鑑みた」などと述べた。

だが、日本人学生も生活費支援がなければ私費になる。日本人であれ留学生であれ、給与が出ない中で生活費を工面するのが大変なことが、進学へのハードルになっているわけである。

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