博士課程への生活費支援「日本人に限定・留学生は除外」が国益を損なう理由。そもそも“給与が出る”世界のスタンダードから日本は劣後

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そこで、「日本の博士課程進学へのボトルネックとなっている経済的見通しの厳しさの原因をどう認識しているか。それは日本人か留学生かで差が出るものなのか」とさらに問うと、阿部大臣は「詳細は事務方にお尋ねください」とだけ述べ、説明を避けた。

文科省は「留学生支援は別の方法で」と主張

その「事務方」に当たる文科省の高見暁子・人材政策推進室長に尋ねると、「修士課程の修了後に就職する場合と違い、博士課程は学生の身分のままなので経済的苦しさがあると認識している」と答えた。

それは博士課程に給与が出ないことの裏返しだと指摘し、「外国人も状況は同じではないか」と問うと、高見氏は「海外の優秀な学生はJ-RISE Initiative(以下J-RISE)など、ほかの方法で支援していく」と述べた。

このJ-RISEは6月13日に政府が発表したばかりの、海外の優秀な研究者を獲得する政策パッケージのことだ。総額1000億円の規模だという。もっともこの1000億円はすでに実施済みの予算を足し合わせたもので、新たに予算をつけたわけではない。博士課程への支援で具体的に予算が決まっているものはほとんどない。

文部科学省は7月1日、海外から優秀な人材を呼び込む政策を発表したが…(記者撮影)

数少ない具体的なものとしては、7月1日に文科省が発表した、「海外から優秀な若手研究者・博士課程学生を受け入れて活躍させる計画を有するトップレベルの大学への助成金」がある。今2025年度から3年間の予定で、総額は33億円だという。

ただ、1年当たりの平均でみると11億円にすぎない。かつメインの使途は若手研究者を雇用するための人件費になるだろう。博士課程への支援に使われるのは、多く見積もってもせいぜい年間数億円と推定される。

留学生への支給をやめるSPRINGの生活費支援と比較すると、差は歴然としている。文科省の資料によると、生活費支援の平均額は1人年間220万円。2024年度の留学生受給者4125人で掛け算すると90億7500万円になる。これが消える中での助成金の数億円は、博士課程に人材を呼び込むうえでまったく補完にならない。

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