文科省の博士学生経済支援プログラム、十分な検証なき「日本人優先」検討の危うさ。担当課は留学生誘致への影響を調査せず

深刻な少子高齢化に直面する日本にとって、海外の優秀な若手研究者の誘致は重要だ。だが、文部科学省は博士課程の学生へ年間最大290万円の経済支援を行う「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」に、国籍による制限を設ける検討に入っている。
その背景を取材すると、文科省が同制度による留学生獲得の効果を調査することなく、「SPRINGによる支援のありなしは、留学生の数には影響しない」という推測を基に制度の見直しに着手していたことがわかった。担当課は調査しない理由を、「留学生支援はうちの担当ではない」「制度の主目的は留学生支援ではない」と説明する。
EBPM(証拠に基づく政策立案)の原則からの乖離、専門的な技術や知識を持つ「高度外国人材」獲得政策との整合性のなさ、省内での“縦割り”を理由に国益への影響を十分に検証しない文科省の姿勢が問われる。
自民党議員が「日本人学生優先」を要求
SPRINGをめぐっては3月下旬、文科省が自民党・有村治子参議院議員による国会質疑に応じる中で、2024年度の受給者1万0564人のうち4125人(全体の4割)が外国人で、かつ中国人が2904人(全体の3割)を占めることを公表。有村氏は「国民生活が厳しさを増す中、日本の学生を支援する原則を明確に打ち出さなければ理解が得られない」と指摘し、見直しを求めていた。
文科省は4月18日に開始した作業部会のテーマに、「SPRINGの日本人と留学生の支援内容を見直す」と明記。変更案の具体的な内容を今夏までにまとめるとしている。
そもそも博士課程に進む留学生は、日本政府による高度外国人材政策の核である「高度人材ポイント制」において、極めて高い配点をされている層に当たる。同制度ではさまざまな項目にポイントを割り振り、70点以上を高度外国人材と認定。80点以上なら最短1年で永住権を申請できる。
高度な学術研究や専門・技術分野の博士号取得には30点もの高評価がつく。SPRINGの受給対象になる留学生の多くは「日本で学位を取得」(10点)、「(年齢が)20代」(15点)などの加点も得られそうだ。
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