文科省から国立大へ「実質天下り」が高止まる実態 「現役出向」段階的に縮小の方針は守られず

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文部科学省から国公立大学への現役出向は高止まりしたままだ(筆者撮影)

中央省庁の官僚が退職後に企業や団体などに再就職することを一般に「天下り」と呼ぶ。このうち、省庁が退職者の再就職を「あっせん」する天下りは国家公務員法で明確に禁じられている。省庁と天下り先がお互いに便宜を図るような癒着の温床になりかねないからだ。

一方で、法規制を受けない「現役出向」という制度がある。官僚はあくまでも省庁に戻る前提で、所属省庁で受け持つ政策や補助金などの影響を受ける法人に一定の期間出向する。若手や中堅の官僚が「現場」を知ることには意義がある、という建前で容認されているものだ。

しかし、現役出向の中には、天下りと実質的に同じに見えるような事案が少なくない。以前、国公立大学への大量の現役出向が問題視された文部科学省について現状を調査すると、国からの補助金の配分額が多い旧帝国大学や筑波大学では、報酬が高額な理事職の特定ポストが、長年にわたって文科省からの50歳以上の出向者の「指定席」になっている実態が明らかになった。

出向から復職した日に定年退職

文科省への情報公開請求で過去10年分の現役出向者のデータを取得したうえで、各人のキャリアを調べた。その結果、文科省から国公立大学への出向者は毎年度、200人以上もいることが分かった。

しかも、50代半ばの官僚が国公立大学の理事に現役出向し、定年を迎える年度末の3月31日に1日だけ文科省に「大臣官房付」として復職して即日、定年退職するケースも目立つ。

このような理事への出向について、2019年2月には柴山昌彦文科相(当時)が「透明性に疑念を持たれかねない」と認めた。そのうえで、「任期満了で2019年4月に交代となる大学の理事出向については半減を目指す」とし、「理事も含む課長級以上の現役出向を『段階的に縮小』する」考えを示した。

当時、国公立大学86校のうち76校に文科省からの現役出向理事が76人いた。「半減を目指す」の言葉通り、2019年4月1日に理事交代となった30校30人のうち、文科省が後任の現役出向を送ったのは16校16人にとどまった。結果、現役出向理事は62校62人まで一旦は減少した。

もっとも、その後は一進一退だ。2021年には55人まで減少したものの、2023年に63人に戻り、2024年で56人となっている(各年とも4月1日時点)。理事も含む課長級以上の現役出向者数も2019年の210人から増減を繰り返しながらも2024年は202人と高止まり(同)。「段階的に縮小する」という大臣の言葉は顧みられていないようにみえる。

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