文科省から国立大へ「実質天下り」が高止まる実態 「現役出向」段階的に縮小の方針は守られず

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だが、運営費交付金の上位10大学で、歴代の現役出向理事の在任期間を調べると、1年強~1年半程度のケースが散見された。在任期間9カ月という例もあった(その官僚は、退任から間もなく別の独立行政法人の理事に出向した)。1年程度の在任期間で、実務で重要な役割を担えるのだろうか。

現役出向者が退任して3カ月が経ってから、後任の現役出向者が来たケースもあった。現役出向者が本当に実務で重要な役割を担っているのならば、空席の期間を作ることは考えにくい。

結局のところ、理事への現役出向者に大学側が期待するのは実務ではなく、「文科省とのパイプ」や「補助金の獲得等につながる情報を少しでも早く得ること」なのではないか。

天下りに詳しい神戸学院大学の中野雅至教授(行政学)は、「天下りと現役出向で、癒着の懸念があること自体は変わらない」と喝破する。

一方で「年金の支給開始年齢は65歳なのに対し、公務員の定年はやっと引き上げられて61歳。省庁内のポストが足りず、(入省年次で)下の人にもポストを与えていかないといけない中、上のポストに行けない人は50代で外に出ざるを得ない。現役出向は省庁の人事を回すための苦肉の策になっている」と構造的な問題を指摘する。

省庁では事務次官を筆頭にした幹部職候補を絞り込む中で、出世争いで敗れたキャリア官僚が早期退職する人事慣習がある。そうした人事を円滑に回すために、各省庁は"必要悪的"に天下り先をあっせんしていた面があった。組織的な天下りのあっせんが"癒着の懸念"で規制されて以降、抜け穴的に「現役出向」が使われている感は否めない。

「卓越大制度」を握る文科省

こうした事情があるにしろ、国公立大学理事への現役出向はやはり問題があると言わざるを得ない。

近年、政府は「選択と集中」を掲げ、大学への関与を強めている。補助金のメインである運営費交付金は以前よりも減らし、省庁などが設定したテーマへの公募によって決める競争的資金を増やしている。運営交付金自体の配分にも、政府が求める様々な条件を満たしているかどうかで傾斜を付けるようになった。

さらに、政府は「10兆円ファンド」を設立して「国際卓越研究大学制度」をつくり、政府が高く評価する大学に集中的に資金を供給する仕組みも始めた。

国際卓越研究大学制度を所管しているのはまさに文科省だ。文科省の施策が国公立大学に与える影響は以前よりも増している。そうした中、選ぶ側(文科省)と選ばれる側(国公立大学)の適切な距離感は改めて問われるべきではないか。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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