
台湾に程近い、フィリピン最北部のバタネス州。今年5月、同州では米軍とフィリピン軍合わせて1万6000人の参加する大規模な軍事演習が実施された。中でも目を引いたのは、米軍による最新鋭の地対艦ミサイル発射システム「NMESIS(ネメシス)」の配備だ(写真)。
ミサイルの特徴は、中国海軍の艦艇を精密に狙えるという点。比政府は、今後もネメシスを国内に常駐させる方針を示している。域内同盟国と協力して対中抑止を強める、米国第2次トランプ政権の強硬姿勢を象徴する出来事だ。
米国内では近年、中国に対する警戒感が一層高まっている。東シナ海や南シナ海における中国の強硬な領有権主張や、人工島造成による既成事実化、急ピッチの軍備増強、人工知能など先端技術の盗用、さらには米国内での情報操作や影響工作──。
こうした動きに対し米国では、民主党・共和党の垣根を越えて「中国の行動が米国の安全保障を脅かしている」という認識が、広く共有されつつある。
トランプ政権の「優先主義戦略」
トランプ政権は、1期目に米国の対中政策を強硬路線へと大転換させた。2期目においても、中国との戦略的競争に焦点を定めている。軍事面で同政権が目指すのは、中国によるインド太平洋支配を防ぐことだ。ポイントは、ヘグセス米国防長官が強調するように中国による現状変更を抑止するという点である。ただし、共産党体制の転覆までは狙っていない。
中国に集中して対応するトランプ政権の姿勢は「優先主義戦略」と呼ばれる。
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