
自由放埒(らつ)すぎるトランプ米大統領。安全保障や関税をめぐり世界の国々を混乱に陥らせている。
第1次トランプ政権(2017〜21年)に重なる時期(18~21年)に駐米大使を務めた杉山晋輔氏と、米国の事情に詳しい双日総合研究所のチーフエコノミスト・吉崎達彦氏が、「トランプの頭の中」をめぐり対談した。
──トランプ大統領が世界を振り回しています。さまざまなことに手を出しすぎだと思いますが、どうみていますか。
杉山 明らかにやりすぎだ(苦笑)。ただし、そのスタイルや人となりは、第1次政権(17~21年)と比べて全然変わっていない。大統領の気まぐれで、がらりと政策が変わることはあるかもしれないが、大枠で1次と2次ではやろうとしていることに変わりがない。
一方で1次政権との決定的な違いがある。今回は2期目で憲法の規定によって再選はないから、もっと自由に振る舞うだろう。前回は政治家としての実績がない中で、政治的な駆け引きがわからない部分があった。政治や軍事の専門家のアドバイスに邪魔され、自分が描いていたとおりにならないこともあったはずだ。
しかし今回はあと3年半しかないから、自分のやりたいことをやる。そのために自分に忠誠を誓う人たちを集めている。とにかく4年間我慢して、それなりに準備してきたから、次々と政策を繰り出している。
サプライズを仕掛けるたびに強くなっている
吉崎 この半年はまさにトランプ劇場の様相だが、象徴的な出来事が3つあった。1つ目は2月28日、ホワイトハウス執務室でのウクライナのゼレンスキー大統領との大げんか。2つ目は4月2日のトランプ関税の発表。3つ目は6月22日のイランへの攻撃だ。いずれも米国の内外に驚きをもたらしたが、トランプの影響力が増して、政治的資本を積み増す結果になった。4月のトランプ関税の公表で株価は暴落したが、その後に元の水準を超えた。これはものすごい追い風になっている。サプライズを仕掛けるたびに強くなっている。
1次政権では、マティス国防長官やティラーソン国務長官のような、時に大統領をいさめる人もいたが、もはやそんな側近はいない。自分なりの野心を持っている人が政権に蝟集(いしゅう)している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら