
トランプ大統領は7月7日以降、これまで計25カ国・地域に対し、高関税を発動するとの内容の書簡を次々に送付した。ところが、4月2日の「解放の日」後のようにアメリカ株式市場は急落することもなく、今のところ高水準で推移している。
事実上、8月1日まで交渉延長と市場は捉えたことも影響しているのであろう。そして、関税引き上げ前に一部の国・地域はトランプ政権とディール成立、あるいは再び関税交渉延長に合意する可能性が高いとの希望的観測がアメリカの金融界で広まっていることも背景にあるようだ。
相互関税の上乗せ分の発動について、トランプ氏は4月に続き7月にも一時停止を事実上延長し、「トランプ氏はいつもビビッて退く(TACO)」と呼ばれている。
経済堅調、市場や支持率にダメージなしとの過信も
しかし、同氏が今回もTACOの行動を取るとは限らない。トランプ氏はトランザクショナル(取引重視)であることが多く、予測不能な行動を取る可能性もあるためだ。次の理由からも8月1日までにトランプ政権は合意に至らず、関税引き上げによって市場が再び混乱するリスクは残されている。
トランプ氏の関税引き上げを後押しする要因の1つが足元の政治経済環境だ。7月20日、第2次トランプ政権発足から半年が経過するが、トランプ氏には追い風が吹いている。
政権発足以降の関税政策について、専門家などはインフレ再燃リスクを懸念してきた。イスラエル・イラン紛争にトランプ政権は参戦するも、中東情勢の大幅な不安定化や原油価格高騰を回避した。足元のアメリカ経済は堅調に推移している。
さらに7月初め、トランプ氏は2期目最大のレガシーともなりうる大型減税延長法案(OBBBA)を議会共和党の協力を得て成立させた。
このように各種主要政策がトランプ氏の思惑通り進んでいる。しかし、トランプ氏は、強硬策を導入しても市場や支持率は落ち込まないと過信し、今後、高関税発動に踏み切るといったリスクをはらんでいる。
また弱い指導者と見られることを嫌うトランプ氏は、特にTACOと呼ばれていることに不満を抱いていると言われ、今度こそは強硬な関税政策などを断行するとの見方もある。
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