
世界最大の大国が深刻な貿易戦争の渦中にあった。大統領ドナルド・トランプが世界の多くの国々に課した関税と、それに対する世界的な報復措置による経済的な損失が積み重なり、雇用は失われ、物価も上昇。世界はアメリカに対するいら立ちと不安を抱いていた。危機はリアルなものだったが、貿易戦争は最後には回避された——。
これは世界的な貿易戦争がどう展開するかを理解するために行われた、あるシミュレーションの結論だ。
先月、アメリカと他国から20人を超える貿易専門家がワシントンに集まり、トランプがアメリカの主要貿易相手国に厳しい関税を課す計画を実行に移した場合に何が起こりうるのか、シミュレーションを試みた。
中国、ヨーロッパ、アメリカ、その他の政府の役割を演じるチームは1日中、会議室を行き来し、経済崩壊を回避するため、関税を撤廃したり、貿易協定を結んだりする提案を出し合った。
トランプ政権の元スタッフも演習に参加
シミュレーションは、安全保障問題に軸足を置く超党派のシンクタンク「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」で実施され、シンクタンクの専門家や、トランプ政権およびバイデン政権の元スタッフなどが参加した。
演習の目的は未来の予測ではなく、参加者は想定される事態を演じることで、トランプが同盟国と敵対国の双方に対して強硬な貿易政策を追求する際に作用する力学のいくつかを明らかにしようとした。
第2次トランプ政権でアメリカの関税率は第二次世界大戦以来の水準に到達。関税回避のための合意が成立するか、報復関税合戦がどのような展開を見せるかなど、世界貿易の未来に大きな疑問を投げかけている。
CNASでのシミュレーションは、こうした力学の展開を探究する取り組みだった。会議室のテーブルに置かれたゲームボードの上には、想定される貿易摩擦が世論、国内の安全保障、国際的な緊張、経済といったさまざまな要素に及ぼす影響を追跡するため、小さな木製キューブがちりばめられていった。緑のキューブはよい、黄色は悪い、赤は非常に悪い、を示していた。
昼食直前の状況は思わしくなかった。ボードには赤いキューブが大量に置かれ、関税が国際的な緊張をあおり、雇用を破壊し、物価を押し上げていることを示していた。
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