トランプはまだ、大統領執務室に足を踏み入れてさえいないが……
カナダ、メキシコ、中国に痛手となる関税を課すという次期大統領ドナルド・トランプの脅しは結局のところ、アメリカ市場の力を利用して他国にアメリカ国境を越える麻薬や移民の流入を食い止めさせる戦術の第1弾なのかもしれない。
しかし、これら世界有数の経済大国に莫大な関税を課すという脅しが仮に交渉のための戦術であったとしても、それはただちに現実世界に影響を及ぼすものとなる。
公約実行を疑問視する勢力を黙らせる目的か
トランプはまだ大統領執務室に足を踏み入れてさえいない。それでも、就任初日にアメリカの3大貿易相手国に関税を発動するという脅しは、全世界に波紋を広げ、国際ビジネスに衝撃を与え、外交関係を揺るがし、トランプが大統領1期目の任期中に交渉した2つの大きな貿易協定に疑問を投げかける事態となっている。
カナダとメキシコからのすべての品目に25%の関税を、中国からの製品に10%の追加関税を課すというトランプが25日遅くに行った発表は、このような措置は経済に害を及ぼすという経済団体からの非難に即座に直面した。
諸外国の政府高官たちは、麻薬や移民のアメリカへの流入を食い止めるために努力してきたとトランプ次期政権を安心させようと躍起になる一方、アメリカの輸出品に独自の関税を課す用意もあると警告した。
トランプの脅しは、本人が選挙運動中に約束した大型関税を実行に移すかどうかを疑問視している投資家やエコノミストたちを黙らせることを意図したものだったかもしれない。トランプは選挙期間中、中国からの輸入品に60%の関税をかけ、そのほかの輸入品には少なくとも、もれなく10%の課税を行うと公約していた。このような措置は世界的な貿易戦争を引き起こし、世界中の経済を減速させる恐れがある。
この脅しは最終的に、交渉人としての手腕を示すものになるのか、それとも単に混乱を招くだけのものになるのか。そこで思い出すべきは、次期大統領がアメリカの利益を確保するために、世界的な関係をひっくり返そうと前のめりになっていることだ。
これには、メキシコ、カナダ、中国との貿易協定を破棄する可能性も含まれる。これらの協定は、トランプが最初の任期中に、厳しい関税をちらつかせることでメキシコ、カナダ、中国に譲歩を強要し、自ら締結にこぎつけたものだ。