
——トランプ政権による追加関税以降、中国の製造業や輸出業者にはどのような動きが見られますか。
トランプ関税の影響を見越した動きは、すでに2024年の夏頃から徐々に表面化していたと考えられる。トランプ氏の当選が現実味を帯びるにつれて、その動きは加速した。11月の大統領当選直後から関税引き上げを懸念する見方は強かった。
船便を利用する輸送では、リードタイムが普通1カ月以上かかる。トランプ氏が大統領に就任する1月20日に急に関税が引き上げられる事態を避けるため、2024年末まで輸出の駆け込み需要が発生し、年明けにその動きは一旦落ち着くように見えた。一方、航空便での輸送が可能な製品についてはトランプ大統領就任の直前までアメリカへの出荷が進められた。
——実際には、トランプ政権の具体的な関税政策の打ち出しは大統領就任からだいぶ後になりました。
今年の春節期(1月29日前後)にかけては、出荷前倒しの影響もあって輸出が一巡したように見えたが、関税発動の後ズレとともに、再び追加の輸出出荷が見られるようになった。結果として、2025年3月の中国貿易統計では、輸出額は前年同月比12.4%増となり、プラス基調を維持している。
軽工業品の受注キャンセルは頻繁に発生
ただし、品目別の状況を見ると、軽工業品については、受注のキャンセルが頻繁に発生しているようだ。これは、1〜3月は本来、本格的な受注時期ではないことに加え、トランプ政権の関税政策による不確実性が影響していると考えられる。軽工業品を中心に、本格的な需要期はクリスマス商戦に向けた夏場以降であり、そこでの動きが注目される。
地域別に見ると、浙江省や広東省といった軽工業が盛んな地域、特に広東省の珠江デルタ地域では、トランプ関税に関連した受注問題が発生しているようだ。また、福建省泉州市の輸出額は1~2月に前年比で30%減少したと報じられた。
この辺りの地域は台湾系のメーカーが集積しており、アメリカ向けの販売が多いと考えられるため、受注元のキャンセルなどが影響した可能性がある。また、浙江省義烏市の卸売市場では、例年に比べてバイヤーの数が少ないとの情報もあった。
その一方で、駆け込み需要の反動や品目による違いも見られる。電子機器やEV(電気自動車)の生産量や輸出量が顕著に増加している地域もあり、新しい工業集積地として注目されている安徽省、河南省、陝西省などでは生産が加速している。
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