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アメリカの対中国の高関税は長続きしない。国際社会の新リーダー目指す中国だが、むしろ大きなリスクは国内経済の長期停滞という構造的問題だ

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中国はアメリカに依存しない資源調達ルートの開拓にも余念がない。写真はトランプ氏の大統領当選が決まった後、2024年11月21日にブラジルに訪問し、ルーラ大統領と会談した中国の習近平国家主席(写真:Bloomberg)

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中国に対し、累計145%もの追加関税を課したアメリカのトランプ政権。そしてそれに報復措置を繰り出した中国。これ以上のエスカレートはなさそうなものの、米中貿易戦争の着地点はまだ見いだせていない。
アメリカに対して強硬姿勢を見せる中国だが、国内では不動産不況、少子化など長期的・構造的な問題が山積する。中国経済の「強さ」をどう見たらいいのか。大和総研齋藤尚登経済調査部長に話を聞いた。

――対アメリカ輸出に課せられた145%もの高関税が中国経済に与える影響について、どのように分析されていますか。

今回の高率のトランプ関税は、中国の実質GDP(国内総生産)を2.9%押し下げると試算している。中国政府は今年の経済成長目標として5%前後のプラスを掲げ、2025年1月~3月は5.4%成長だった。残りの期間を考えると、このまま何もしなければ、成長率は3%程度にまで落ち込むだろう。中国経済にとって非常に厳しい状況となる。

アメリカ向けの輸出が激減すれば、それを完全に補填することは困難であり、中国国内の企業の稼働率は低下する。その結果、企業業績が悪化し、人々の所得に影響が出て、消費も低迷するという悪循環が始まる可能性が高い。

――中国政府は、この状況に対してどのような対策を講じているのでしょうか。

目立つのは、貿易強化を含めた外交面だ。習近平国家主席がベトナムやマレーシアといった近隣諸国を訪問し、関係強化を図っている。

しかし、これらの外交努力がアメリカ向けの輸出減少を完全に代替できるとは考えにくい。また、中国が無理に輸出を増やそうとすれば、現在批判されているようなデフレ輸出(供給過剰の市場での低価格品輸出)を助長し、受け入れ国からの反発を招く可能性もある。自国の産業を保護しようとする国々は、中国からの輸入に対して関税を引き上げることもありうる。

貿易戦争は基本的には中国が不利

――中国はアメリカに対して同様の高率な報復関税を課しました。アメリカと中国の貿易戦争の見通しは。

まず、中国は経済規模でアメリカに劣り、さらに中国の対アメリカ輸出依存度は、アメリカ側の対中輸出依存度よりもはるかに大きい。この点を踏まえれば、貿易戦争は基本的に中国のほうが不利だ。中国の貿易収支が大幅な黒字であることを考慮すれば、経済規模と依存度の双方の面から、中国がより大きなダメージを受けるだろう。

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