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EU経済に多大な悪影響を与える「20%トランプ関税」、スペイン政府が用意した2兆円規模の産業支援は有効な打開策となるのか

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スペインの主要商業港に積み上げられたコンテナ。相互関税で対米輸出はどうなるか(写真:Bloomberg)

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※本記事は2025年4月10日7:00まで無料会員は全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

傍若無人なアメリカのドナルド・トランプ大統領が4月3日に発表した「相互関税」の内容は、大方の投資家や識者の想定をはるかに上回る、最悪に近いかたちの内容だった。欧州連合(EU)の加盟国に一律に課された相互関税の税率は20%と、日本(24%)に比べれば低いが、そのまま実施されればEU経済に多大な悪影響を与えると懸念される。

もちろん、ディールを好むトランプ大統領であるから、自らが納得する条件を引き出すことができれば、相手国に対して課す相互関税の税率を引き下げることになるのだろう。一方で、トランプ大統領はEUの加盟国に対して一律に20%の相互関税を課したのだから、特定の国だけが他の国を出し抜くかたちで、引き上げを交渉することはできない。

例えば、イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、年明けに就任したトランプ大統領に対して事実上のトップセールスを仕掛けた。国際通貨基金(IMF)の「多国間貿易統計」によると、イタリアの対米貿易黒字は2023年時点で440億ドルだった。これはEUではドイツ(830億ドル)とアイルランド(650億ドル)に次ぐ3番目の規模である。

メローニ首相としては、あわよくばイタリアだけでも相互関税の税率を引き下げることができないか、打診するつもりだったのだろう。しかし実際には、EU加盟国に対して一律で20%の相互関税が課されることになったため、イタリアだけがそれを減免される余地は、まずなくなった。メローニ首相としてもこれは想定外だったのではないか。

同じことは、日本にも指摘できる。石破茂首相は2月上旬、トランプ大統領と会談し、メローニ首相と同様のトップセールスを仕掛けた。会談後の記者会見は終始和やかなムードで行われ、日本に対する相互関税は低水準にとどまることが期待されたが、その期待ははかなく崩れ去り、結局はEU以上に高い相互関税が課されるという始末だ。

2兆円規模の緩和策を用意したスペイン

アメリカに対する交渉はEU27カ国ベースで行われることになるだろうが、一方、理屈の上では、加盟国単位で可能な限りの緩和策を用意することができる。その嚆矢ともいえるのが、スペイン政府が用意した緩和策だ。トランプ大統領が相互関税を発表した同日、スペイン政府は総額で141億ユーロ(約2兆円)の産業支援策を提供すると発表した。

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