トランプ関税戦略、路線変更の意味(上):「世界経済の作り直し」に乗るが、市場急変で交渉に転換

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市場急変に加えEUの報復関税準備の報に、トランプ大統領はわずか18時間で関税戦略の方針を変えた(写真: Michael Nagle/Bloomberg)

4月2日の衝撃的な発表から約2週間。その間に相互関税政策は何度も見直しが行われ、そのたびに世界中を当惑させている。世界の貿易構造を変えてしまいかねないほど重要な政策が、かくも簡単に見直されるのはどうしてか。長期的な展望を持った戦略ではないのかという疑問が湧いてくる。

当初から相互関税について政権内に意見の相違

出だしから迷走の気配があった。発表の翌日、3日の朝、ナバロ上級顧問はCNBCのインタビューに「大統領は関税問題で取引をするつもりはない」と答えている。ラトニック商務長官もCNNに「トランプ大統領が相互関税を後退させることはない」と語っている。

だが、3日に株式市場や債券市場が急落すると、トランプ大統領は記者団に対して「関税に関して個々の国と取引をする可能性はある。すべての国から電話がかかってきている。私たちは運転席に座っている。以前なら彼らにアメリカのために好意を示すべきだと言っても、『ノー』と言っただろう。しかし、今、彼らは私たちのために何でもするだろう。関税は私たちに大きな交渉力を与えてくれた。関税には常にそうした力がある」と、相互関税を取引の材料にすることをほのめかしている。

閣僚も一枚岩ではない。ベッセント財務長官は「交渉を通じて一部の国で関税が回避される可能性がある」「関税は75カ国以上を通商協議の場に引き出す戦略の一部である」と語っている。さらに、お互いが関税をゼロにする「ゼロ・フォー・ゼロ合意」まで示唆している。また、トランプ大統領の息子のエリック氏も「X」に「私ならトランプ大統領と貿易交渉をする最後の国にはなりたくない。最初に交渉した国が勝利する」と投稿している(ホワイトハウスのスタッフは「彼は政府を代表していない」と、否定的なコメントをしている)。

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