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機能不全に陥った台湾議会に怒った市民の実態、半年以上にわたり続いた野党議員のリコール運動の顛末

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台湾議会
立法過程が機能不全に陥っている台湾議会に対して草の根の市民運動が広がった(写真:Bloomberg)

8月23日に台湾では再び野党・国民党の立法委員(国会議員)のリコール(罷免)是非を問う投票が行われる。7月に行われた24名の野党議員のリコール投票はすべて不成立に終わった。23日のリコール投票はほか7名を対象とし、半年以上続いた「大罷免運動」がひとまず結末を迎える。

今回行われるリコール投票も成立する見込みは高くない。台湾では2024年の国政選挙後に議会で野党が多数派を占め、野党主導で国会権限の拡大や政府予算の大規模削減などが行われ、民進党を支持する市民らが強く反発。そこから野党議員をリコールしようという動きが広がり、「大罷免運動」となった。

この「大罷免運動」は一見すると政党同士の争いのようだが、単なる政党間抗争でもない。野党が主導する議会で起きた運営の機能不全、それにともなう民主主義の規範の揺らぎに対する、市民社会からの異議申し立てとして捉えることもできる。その実態は多層的である。

政党による動員だけで罷免投票はできなかった

野党主導の議会への反発が顕著化したのは2024年5月だった。数万人が立法院(国会)外で抗議活動を行い、「青鳥行動」と呼ばれた。この名称は立法院前の道路名「青島東路」と字面の近い「青鳥」をSNS上の呼びかけで用いたためだ。

その後も断続的に抗議活動が行われ、国民党議員への罷免運動の声も高まった。台湾メディア『報導者』によると、罷免団体の署名収集は2024年7月頃から開始され、同年末には1日に集まる署名数が数百件、2025年2月初旬には数千件に急増したという。

市民運動から始まった罷免運動だが、政党の関与も始まった。2025年1月初旬には民進党立法院党団リーダー(院内総務)の柯建銘氏が国民党籍議員41人の罷免を目指すと表明。これに対して国民党も「罷免には罷免を」として党全体で対抗する姿勢を即座に示した。政党間抗争に発展したのだ。

政党側も社会運動のエネルギーを自身の政治的利益と結びつけようとした。罷免運動は純粋な市民運動であると同時に高度な政治的駆け引きの舞台を伴うことになった。

ただし、市民は単に党派的に動員されたわけではない。台湾の罷免選挙は政治的動員力だけでは成立しない。実際、国民党の「罷免には罷免を」による民進党議員への対抗罷免は要件を満たせず投票に至らなかった。

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