与野党の激しい衝突と党利党略に基づく政争が続く台湾。年末に野党が賛成多数で可決した3つの改正法案をめぐっても与野党双方が抱える問題が浮かび上がる。
台湾世論の分断が続いている。台湾では2024年末に立法院(国会)で違憲判決のハードルを上げる憲法訴訟法、リコール条件を厳しくする選挙罷免(リコール)法、地方政府への交付金を大幅に増やす財政区分法の3つの改正法案が可決された。
いずれも立法院で多数派を占める野党連合(国民党・民衆党)の主導によるものだ。2025年1月に発表された台湾民意基金会の世論調査では、これら三法案への賛否が二分された。憲法訴訟法改正は賛成49.9%・反対29.2%、選挙罷免法改正は賛成45.7%・反対47.2%、財政区分法改正は賛成42.3%・反対42.8%となっている。
問題だらけの三法案
改正三法の内容と問題点は多岐にわたる。例えば、選挙罷免法の改正では公職者のリコール(罷免)条件が大幅に引き上げられた。現行では原選挙区の4分の1以上の同意票があれば罷免されるが、新制度では対象となる公職者が当選時に得た得票数を上回る同意票が必要となった。
さらに罷免投票を求める署名時には身分証明書の表裏コピーの添付が義務付けられた。市民団体は世界に前例のない身分証明書のコピー添付義務が不当な制限だと批判する。
また憲法訴訟法の改正では、憲法判断を下す定数15名の大法官のうち、定足数を定数の3分の2である10名に設定し、違憲宣告には最低9名の同意が必要となった。違憲判決のハードルが一段とあがり、性的マイノリティや先住民族の権利保障など、先進的な司法判断を下してきた司法の機能に影響を及ぼす可能性がある。
現在、台湾の憲法裁判所に持ち込まれる案件の99.1%が市民からの申立てである。そのため、この改正は人民の権利保障を実質的に制限しかねない。
しかし、これらの法案を強行採決した野党側だけに問題があるわけではない。民進党側にも注目すべき課題がみられる。
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