台湾の半導体を批判しまくるトランプに抱く懸念 武器購入やアメリカ工場で対応を図りたい台湾

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台湾の半導体産業へ厳しい言葉を続けていたトランプ大統領。東アジアの経済や安全保障の要である台湾にトランプ2.0はどう影響し、それにいかに対応すべきか議論が広がる。

大統領執務室のトランプ大統領
関税を武器にアメリカ有利な環境を作り出そうとするトランプ大統領に、台湾も対応で苦慮している(写真:Eric Lee/The New York Times)

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トランプ政権発足前夜、旧知の台湾人研究者からメールが届いた。その中には、「日本経済・産業の長期にわたる苦境は1980年代のアメリカの政策に起因していると思いますか」という問いが含まれていた。

日米貿易摩擦とそこでの日本の対応が日本の「失われた30年」の起点になったのだとすれば、台湾もトランプ政権への対応を誤れば、長期低迷を余儀なくされるのではないか——。こうした認識や推論の真偽は別として、「トランプ2.0」にいかに対応すべきかをめぐって、台湾においても戸惑いや懸念が広がっていることをこのメールは象徴している。

1980年代、日本は半導体分野でアメリカと貿易摩擦を抱えていた。そしてその後、日本の半導体産業は国際的な競争力を失っていった。そのことも、台湾の人々の懸念を膨らませている面があるように感じられる。

2月中にも半導体への関税を発動か

選挙期間中からトランプ大統領は台湾半導体産業に対して批判的な発言をしてきた。例えば、2024年7月にはブルームバーグのインタビューで、台湾はアメリカの「半導体ビジネスをほぼ100%奪っていった」と発言した。

当選後の2025年1月27日にも演説で「近い将来、海外で生産されたコンピューターチップ、半導体、医薬品に関税を課す予定だ」「半導体産業の90%を占める台湾に生産が流出したが、それを取り戻したい」と述べ、最高で100%の関税率を課す可能性についても触れた。1月31日にトランプ氏は石油や天然ガス、鉄鋼、アルミニウム、銅、医薬品と並び、半導体に対しても関税を課す考えを示し、2月18日頃に実施する可能性を示唆している。

また、トランプ氏はアメリカに投資をした半導体企業への補助金の見直しも検討している。バイデン政権が半導体産業誘致のために「CHIPS・科学法」を制定し、補助金を支給したことを「滑稽で馬鹿げている(ridiculous)」と考えているからである。

高関税を課せば、補助金など出さずとも、半導体工場を誘致できるだろうというのがトランプ氏の論理である。そう言えるのも、アメリカの半導体市場は大きく、失うには惜しい市場だという自信があるからだろう。

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