トランプ氏は台湾の安全保障に関与することに消極的な姿勢を一見示したが、台湾情勢をめぐる構造は簡単に変わらない。むしろ懸念は台湾社会の反応だ。
![演説するトランプ氏](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/d/5/1140/img_d57aefbfd4f57770fca3d8d1c173a6b9155154.jpg)
半導体などハイテク企業の株価下落が続いた。その理由の1つにブルームバーグ・ビジネスウィークが行ったインタビューでトランプ氏が台湾に対して消極的な発言をしたことがある。
台湾の代表的な株価指標である加権指数は7月22日までの4営業日で6%超も下落した。バイデン氏は7月21日にアメリカ大統領選からの撤退意向を表明し、ハリス副大統領を後継指名したが、トランプ氏が大統領に返り咲く時代に世界は身構えている。
慣れて冷静な台湾
ブルームバーグはトランプ氏の台湾防衛に関する姿勢について「鈍い反応だった」とまとめている。同氏はインタビューで「台湾はアメリカに防衛費を支払うべきだ」と述べたとされ、「台湾はわれわれの半導体ビジネスを奪った」「とてつもない富を得ている」と経済面での不満が背景にあることをにおわせた。
以上の内容は台湾でもすぐさま報じられ、十数もあるテレビのニュース専門チャンネルで繰り返し流され、毎晩各チャンネルが放送している討論番組のホットイシューにもなった。情報を浴びせられた市民からは懸念の声も広がった。
これらのメディアや市民の反応とは対照的に、台湾政府や半導体大手TSMCなどの代表的な企業とその幹部らの反応は静かだった。政策担当者や経済界は特段の動揺を少なくとも表向きには見せず冷静だ。「またか」と半ば呆れに近い形で唖然としているというのが正確だろうか。
卓栄泰・行政院長(首相)は「(台湾は)安定的に国防予算を拡大させ、兵役義務期間も再び延長させ、社会の強靱化を進めている」とし、「台湾海峡やアジア太平洋地域の安定のためにさらなる責任を負うつもりだ」と語った。TSMCの魏哲家・董事長(会長)CEOは「海外工場の計画に変更はない。アリゾナ、熊本、おそらくヨーロッパでも工場の拡張を続ける」と強調した。
一見するとトランプ氏などアメリカの圧力をそのまま台湾が受け入れてさらなる負担増に苦しんでいるかのように見える。しかし、その見方は違う。台湾が現在進めている方針と大きく逸脱していないからだ。
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