台湾情勢の緊張が続く中、台湾に米軍を再配備する可能性があるか一部で話題だ。台湾と米軍の過去の経緯からその可能性を探る。
アメリカ大統領選挙が1カ月後に迫っている。台湾の総統とアメリカ大統領の任期はともに4年で、1996年以降、同じ年に選挙が行われている。台湾の総統は選挙が1月で就任が5月だが、それが終わっても外交・安全保障関係者は落ち着かない。
なぜならば、アメリカ政府が外交関係のない台湾の安全に関与することを規定した「台湾関係法」によると、台湾を防衛するための軍事行動の選択肢は、実質的にアメリカ大統領に委ねられている。つまり、台湾の命運がアメリカ大統領選挙の結果に影響を受けるといっても過言ではないからである。
振り返れば、オバマ政権が戦略の重心をアジア太平洋地域に移すリバランス政策で台湾は言及されなかったが、トランプ政権ではインド太平洋戦略のなかで台湾の防衛に関する議論が進んだ。トランプ政権4年間でオバマ政権8年間の約2倍もの台湾への武器売却が承認されている。そして、トランプ再選を阻んだバイデン氏は、オバマ政権の副大統領であったが、政権発足とほぼ同時に前政権の台湾支援の継続を表明した。
「考えているほど多くない」米軍が台湾に駐留
バイデン大統領は、繰り返し台湾防衛への支援を明言してきた。2022年9月には、中国が台湾へ侵攻した際、台湾を守るために米軍を派遣する考えを明言。そして2022年10月、ウォール・ストリート・ジャーナルがアメリカ政府関係者の話として、米軍の特殊作戦部隊と海兵隊を台湾に派遣し、台湾の軍隊に対する訓練を少なくとも1年間は実施している旨が報じられた。
同時期、CNNの単独取材に応じた蔡英文総統は、駐留米軍の人数について質問され、「人々が考えているほど多くはない」と答えた。1979年の米台断交以来、総統が米軍の駐留を公式に認めたのは初めてのことであった。
アメリカ政府関係者は、恒久的配備についてのコメントを拒否している。中国の台湾に対する軍事的な圧力が強まるなか、1979年に台湾から米軍を撤退させたアメリカが台湾に「再び」軍隊を配備する日が来るのだろうか?
その可能性を考えるためには現在の情勢だけで考えるのは十分でない。これまでどのような米中台関係が構築され、実際に米軍はどのように台湾に関わってきたか正確に理解することが大事である。そこでこれまでの経緯を振り返ってみたい。
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