鴻海が日産に触手を伸ばす思惑とは。日本側の心証も意識しつつ、じっくりと事を進める構えだ。
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日産自動車の行く末をめぐり、話題が絶えない。
2024年末、ホンダと日産が経営統合への協議入りを発表した。だが、2月13日に両社が経営統合の撤回を正式に表明。世紀のビッグニュースはわずか1カ月強で立ち消えた。
ところが、日本時間2月18日には英紙フィナンシャル・タイムズが、日産の内田誠社長が退任すればホンダが買収交渉を再開する意向だと報じた。業績が急激に悪化する日産をめぐる業界再編の動きは2025年の自動車業界でテーマであり続ける。
「買収ではなく協業」その形とは
日産に関心を寄せ続ける台湾の鴻海精密工業の姿勢も注目され続けるだろう。ホンダと日産が統合協議入りを発表する前の2024年12月半ばに、鴻海が日産株の取得に向けてフランスでルノーと協議していると報じられたほか、2月に入ってからも台湾の中央通信社は鴻海の劉揚偉・董事長(会長)が電気自動車(EV)事業を担う関潤・最高戦略責任者にルノーと話し合うよう指示したと報じた。
関氏は元日産ナンバー3で、2023年に鴻海に入った。少なくともこの頃から鴻海は日産に関心を持っていると見られる。それより前からも台湾財界の一部や鴻海周辺では、鴻海が触手を伸ばす対象のひとつに日産があると言われており、関氏の招聘はその証と話す者もいた。
春節(旧正月)後の2月12日、仕事始めでメディアの取材に応じた劉会長はルノーとの接触を認めた。その上で、「鴻海としては買収ではなく協業だ」と初めて公の場で日産との協力やルノーの接触について言及した。
また「改めて強調したいがわれわれは(自動車)ブランドに参入しない」とも主張。ルノーとの接触についても「協業について議論するためで、株式取得が主目的でない」と説明した。
鴻海は世界最大の電子機器受託製造(EMS)企業である。アップルのiPhoneやソニーのプレイステーション、任天堂のスイッチなどのほか、アメリカ企業のPC生産を請け負っていることで知られる。自らブランドをもたない黒子として成長し、今や売上高32.7兆円を誇る。
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