台湾経済にとって半導体産業が極めて重要なのは論を待たない。2021年の台湾のGDPに占める半導体製造業のシェアは11.2%と高い。製造業のGDPに占めるシェアは37.9%にも達する。台湾の輸出に占める集積回路(IC)のシェアも金額ベースで34.7%に及ぶ(2024年)。
ただ、台湾の輸出統計では、IC輸出額のうちアメリカ向けの比率はわずか4.5%となっている。なぜか。理由は2つある。
半導体はマレーシアからの輸入が多い理由
ひとつは、第三国・地域経由でアメリカに輸出されているケースが少なくないからだ。台湾の輸出統計では対米IC輸出額は74億ドルにとどまるが、アメリカの輸入統計では2024年の台湾からのIC輸入額は113億ドルとなっている。その差は約40億ドルと大きい。
輸入統計には保険料や輸送料だけでなく、香港などを経由してアメリカに輸出された分が加算されているからである。台湾の輸出統計では、経由地向け輸出として計上されることが多い。
もうひとつのより大きな理由は、台湾で前工程(シリコンウェハー上に回路を形成する工程)が行われた後、マレーシアなどで後工程(ウェハーを個々のチップに切断し、パッケージング・テストを行う工程)が行われ、アメリカに輸出されているケースが多いからである。実際、アメリカ側のIC輸入統計をみると、マレーシアからの輸入が全体の23.8%に達している。
台湾はもとより世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリー)であるTSMCの事例をみれば、台湾半導体産業にとってのアメリカの重要性がわかる。TSMCは世界トップ10ファウンドリーの売上高のうち、たった1社で64.9%ものシェアを占めている(2024年7~9月期)。
そのTSMCの地域別売上高をみてみると、北米が70%ものシェアを占めている(2024年)。台湾第2位、世界第4位の台湾系ファウンドリーであるUMCの場合、中国を含むアジア向けの売上高が61%と最多だが、北米向けも25%と無視できない規模だ。それだけにトランプ氏の半導体に関する言動から台湾企業は目を離せないのである。
トランプ氏がどの範囲の国・地域にどれほどの関税率をかけるのかは不明だが、アメリカへの半導体工場誘致の効果を高めたいのであれば、上記のサプライチェーンの特徴を踏まえて、広範囲な国・地域に高関税をかける必要があるだろう。
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