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TOTOが中国市場低迷の逆風をはね飛ばすワケ、新社長が激白「アメリカの成長」と「半導体関連事業の躍進」、日本ではリフォーム需要が拡大

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田村信也/たむら・しんや 1967年福岡県生まれ。九州大学大学院修士課程修了後、1991年TOTO入社。ウォシュレット企画部長、TOTOベトナム社長、TOTOアメリカホールディングス社長などを経て、2025年4月から代表取締役社長執行役員(現職)(写真:今井康一)
住宅設備メーカー大手のTOTO。これまで中国が稼ぎ頭だったが、住宅市況の悪化を受けて価格競争が激化し、2025年4月に中国にある4工場のうち2工場を閉鎖した。中国事業失速の一方、半導体製造装置向けの部品事業は絶好調で全体の利益を牽引する。4月に社長に就任した田村信也氏に足元と今後の経営環境について聞いた。

 

中国では外資メーカーが全滅状態

――かつて収益柱だった「中国大陸事業」は2024年度に36億円の赤字に落ち込みました(2023年度は44億円の黒字)。工場閉鎖に伴い、2024年度の341億円に続いて今2025年度も約150億円の特別損失を計上予定です。何が起きているのでしょうか?

中国で当社は、新築マンションの設計段階から入り込んでいく商売の規模が大きい。ところが、2023年ごろから不動産市況が大きく落ちて、新築住宅の販売量がぐっと止まった。

そのため、新規案件に住宅設備メーカーが殺到して、競争の条件がものすごく厳しくなっている。外資はもう全滅状態で、中国ブランドもギリギリでやっていて、誰も得していない。

――中国ブランドが踏みとどまっているのは、なぜでしょうか?

中国のブランドはとても強くなっている。たとえばわれわれが10年の耐久性を考慮して設計するところを、中国ブランドは5年で壊れるかもしれないが安くて、使っている間はしっかりしているものを作るようになった。消費者も変わった。今の若い人はちゃんと動けばいいし、どちらかというと国産を選ぼうという感覚を持っている。

その競争環境下で、少子高齢化が進んでいるうえに、結婚しない人も増えており、また投資目的での住宅購入も減った。住宅市場が将来的に上向くことは考えにくい。そこで売り上げは今の状態が続くことを前提にし、当社の活動を適切なサイズに合わせていくために、それに伴う損失を計上することにした。

今後も高級品の需要は低いままだろうが、当社にしかない新しい提案を繰り返していく。たとえばリフォーム向けの製品だ。配管などリフォームならではの制約を乗り越えて工事を手軽にする製品を出すと、お客さんの裾野が広がる。中国事業は2026年度には黒字化する。20%以上あった昔の利益率には戻らないが、3年くらいかけて8~9%まで持っていく。

――他方、アメリカではウォシュレットの普及が進み、売り上げが伸びています。

ウォシュレットの知名度を上げる施策が進んできていたところに、コロナ禍でトイレットペーパー不足が起こり、ウォシュレットの存在が口コミで一気に広まった。

アメリカの人口は日本の3倍で、トイレは一家に2~3台ある。温水洗浄便座の普及率はアメリカでは2.5%にもかかわらず(日本では9割弱)、当社は既にアメリカ向けの販売台数が日本向けの3分の1まで来ている。

価格は日本の水準と変わらず、賃金が高いアメリカでは相対的に安く見える。顧客の裾野は広く、2030年度までに日本の販売量に追いついてもおかしくない。

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