ヤマト運輸の社長交代は何を意味するのか? ヤマトHD長尾裕社長を直撃、「宅急便一本足打法から脱却、法人も輸送も明確に成長させる」

宅急便だけではもったいない
――今年4月にヤマト運輸のトップが長尾社長から阿波社長に代わりました。なぜ今、交代となったのですか?
どんな経営チームにするかは大企業では非常に重要だ。HD制にした2005年当時から「宅急便一本足打法からどう抜け出すか」という課題があった。
2021年にはグループ会社や事業部ごとのサイロ化(組織が部門ごとに分断され連携が取れていない状態)を打破するため、複数の事業会社をヤマト運輸に統合する「ワンヤマト」を実行した。
今回はある程度、縦のラインで経営体制を強くしていく狙いがある。
宅急便事業のヤマト運輸の社長交代は目に見える形だが、国内と海外を合わせた法人事業、拠点間の輸送を行う幹線輸送の事業、EV導入などのノウハウやシステムを持つモビリティ事業などの事業があり、それぞれの責任者を置いている。数年をかけて、失敗も含めてさまざま経験を重ね、分担して任せられる下地が整ったということだ。
――つまり、「ワンヤマト」からの修正という意味があるということですね?
従来は「ヤマトは宅急便の会社」という意識が強く、社員も結果的に宅急便しか売っていなかった。宅急便をいかによい形で利用してもらうかも追求すべきだが、それだけではもったいない。
今回、宅急便事業は個人顧客と地域の中小の法人顧客、つまり宅急便の営業所で日々対応している顧客向けの商売であると再定義した。
一方で、大口顧客と向き合う法人支店のビジネスは法人事業の管轄だ。全国の法人支店(約400)をネットワーク化しようと進めている。拠点として約110以上の倉庫を持つことも大きい。これも法人向けビジネスにおけるネットワークだ。
これだけ宅急便の顧客、法人顧客がいるのに、ビジネスパートナーと言えるような(サプライチェーンを含む)提案は数社しか実現できていない。大口顧客への提案は間違いなく成長領域で、延長線上に海外もある。明確に広げていく。
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