
数々の経済・貿易交渉に携わった鄧振中氏。トランプ関税を「大人になるチャンス」と指摘する(写真・今周刊)
トランプ大統領は関税という大ナタで国際貿易秩序を大きく変えようとしている。一方、数々の交渉経験を有する鄧振中はこの事態を悲観的に捉えていない。交渉のテーブルでは台湾はより多くのメリットを提示できるはずだと考えているからだ。そして今、台湾企業は変革の時にあるとも語る。
トランプは新しい制度をつくろうとしている
台湾の「経済貿易交渉総代表」の重責から離れ、1年が経った鄧振中は2025年の今年で73歳。しかし今もトランプ政権の関税政策の進捗を逐一チェックしている。毎日複数の国際メディア報道を読み込み、トランプ大統領の「トゥルースソーシャル」の投稿と突き合わせ、
「必ずフェイクニュースでないことを確認している」
と、笑顔で話す。
今回のインタビューが行われた約12時間前。アメリカのトランプ大統領は関税の実行を90日間猶予し、世界中から輸入される製品に一律10%の関税とすると発表した。
ただし中国に対しては125%に引き上げるとも語った(ちなみにトランプ大統領就任後にフェンタニル薬物問題による20%の課税も加えて、現在、計145%の高関税状態となっている)。
90日間の猶予期間に、台湾をはじめとする世界各国は少しだけほっとしただろう。しかしベテラン交渉官だった鄧振中の表情は依然として厳しい。台湾政府と企業に対し決して気を緩めてはならないと説く。
「トランプ大統領はいかなる制約もなく規範もない。おそらくまったく新しい制度をつくり上げようとしている」
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら