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安倍政権の通商キーマン・今井尚哉氏に聞く「トランプ関税」対米交渉で持つべきカード、やってはいけない“ディール”とは?突然「シンゾー」の理由

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今井尚哉(いまい・たかや)/1982年通商産業省(現経済産業省)入省。第1次および第2次安倍政権で首相秘書官を務め、2019年に首相補佐官。その後、2024年10月まで内閣官房参与。2021年からキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(撮影:尾形文繁)

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アメリカのトランプ政権が打ち出した関税政策が、世界に衝撃を与えている。アメリカと中国の間では関税引き上げの応酬となる一方、日本や韓国などには自動車関税が重くのしかかっている。世界各国を標的とした相互関税の適用は3カ月間猶予されたが予断を許さない。
日本はトランプ政権とどのように向き合うべきか。安倍晋三政権時に首相補佐官、首相秘書官として日米通商協議に関与した今井尚哉・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹にインタビューした。

──赤沢亮正・経済財政・再生相が訪米し、4月17日にもトランプ政権のベッセント財務長官と協議する予定です。日本はトランプ大統領が狙う各国との政府間交渉で、トップバッターになるとも言われています。日本政府はどのような姿勢で交渉に臨むべきでしょうか。

日本とアメリカだけがうまく取引できればいいのではない。「国難」という言い方には違和感がある。問題の本質は、どうすればアメリカが入った形で世界の自由貿易体制を維持できるかにある。

世界最大の経済大国であるアメリカが、自由貿易のルールを一方的に破棄しようとしている。戦後一貫して自由貿易システムの実現のために力を尽くしてきた日本は、今こそ毅然とした姿勢を示し、交渉に当たるべきだ。そのためにも、いくつかのオプションを手の内にそろえておく必要がある。

WTO違反は明らか、緊急招集もアリ

──どういったオプションが考えられますか。

以下のような3つのオプションを用意しておくべきだ。

1つ目は、韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州連合(EU)、状況によっては中国とも連携して世界貿易機関(WTO)の場でアメリカの違反を取り上げるというオプションだ。相互関税のみならず、自動車など個別関税自体についてもアメリカのやり方がWTO違反であることは明白だ。極端な話、緊急会議を招集して離脱勧告をすることも考えられる。

これは、ただちにそうするべきだと言っているわけではない。まずはアメリカによる一方的な関税措置に対して、各国による意見交換という形でもいい。現行のWTOは自由貿易を是とするばかりに経済成長できないままの国があることは問題で、ルールを見直すべき時期にきているのは確かだ。ただ、より保護色の強いWTOのルールを作るには時間がかかる。

トランプ大統領は多国間交渉を嫌い、1対1の交渉で有利な条件を勝ち取るゲームに持ち込もうとする。WTOに持ち込むオプションは用意しておいていい。その場合、アメリカと真っ向からやり合うことになるが、アメリカにしてみても最もハードな交渉になる。

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