
「何が起こるかわかりにくいのがリスクだ」(安川電機の小川昌寛社長)、「(関税の影響は)非常に複雑になってきている。われわれもいろいろ想定しているが、それを超える事態が起きたときのことも見極める必要がある」(三菱商事の中西勝也社長)。
4月2日、トランプ米大統領が諸外国に対する相互関税を発表するや、世界中にパニックが生じた。「事前に予想されていた中で最悪のシナリオに近い」(野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト)と評されるほど各国に課された関税率は高かった。
コロナ禍以来のリスクオフの様相
これに最も強く反応したのは金融市場だ。相互関税の発表後、米ダウ平均株価は4営業日連続で下落し、4日間で4579ドル(10.8%)安を記録。日経平均株価も同じく3営業日連続の下落で計4589円(12.8%)安となった。マネーは国債へ向かい、長期金利が急低下するなどコロナ禍以来のリスクオフの様相を呈した。
その後、金融市場は一進一退を繰り返している。4月9日にはトランプ大統領は国・地域ごとに設定した相互関税の上乗せ部分を90日間停止する(中国を除く)と発表したが、一律10%の基本税率は維持している。冒頭の企業トップ発言のようにトランプ関税の影響が今後、どのように実体経済へ波及するのかは読みにくい。
世界最大の経済および輸入大国である米国の関税引き上げは、国際サプライチェーンの再編を強制する力を持つ。最終製品メーカーと部品メーカーの間で最適な生産拠点の再配置が模索され、さらにそれに合わせて日本の強みであるロボットや各種製造装置といった資本財メーカーも再配置を進めなければならない。
また「関税が高くなったので需要が減る」という単純な話ではなく、競合国との関税の差によっては逆に需要が増える可能性もある。価格設定戦略を含めて複雑な方程式を解かなければならない。
マクロ経済に与える影響も大きい。民間エコノミストの各種試算を総合すると、一連の追加関税によって米国の実質GDP(国内総生産)成長率は2%ポイント前後押し下げられ、日本にも1%ポイント弱の下押しがあるとみられる。さらに米国は輸入物価上昇によるインフレでスタグフレーション(経済停滞とインフレの併存)に陥り、日本も景気後退に転じるリスクがある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら