台湾では野党が主導した「国会改革」法案をめぐり、与野党で熾烈な対立が続いている。制度と民意の現状から台湾政治の今に迫る。
台湾の立法院(国会)では野党が提出した立法院改革法案の一部が5月末に可決された。総統による立法院での国情(国政)報告の常態化、質疑応答の義務化のほか、立法院の人事同意権や調査権の強化、公務員の虚偽陳述や回答拒否に対する罰則も追加された。
行政院は6月6日に、改革法案が権力分立や人民の権利侵害など憲法違反の可能性を理由に実行困難だと立法院への再審議を請求した。民主化とともに台湾で制定された中華民国憲法追加修正条文では、行政院は立法院が通過した法律案を施行困難と認定した場合、立法院に再審議を求めることができる。ただし、立法委員(国会議員)総数の過半数が原案維持を決議すれば、行政院長(首相)は同案を受諾しなければならない。
「国会改革」か「国会権限拡大」か
今後、立法院で当該法案が再可決された場合、与党・民進党による憲法法廷への憲法解釈申請が予想される。そもそも、この法案を「国会改革」と見るか「国会権限拡大」と見るかは党派的立場の違いを反映している。
民進党は法案を国会権限の不当な拡大と断じる一方で、野党の国民党と民衆党は長年待ち望まれた国会改革だと主張している。筆者の見立てでは、今回の法案には確かに内容および審議の手続きに問題があるだろう。しかし、党利党略と多数派の論理が横行する台湾政治の現状に対して、台湾の民意は国会改革を求めているとも考えられる。
確かに野党側の主張には、今回の法改正は2004年に出された憲法解釈令585号で認定された「国会の調査権」を法制化したにすぎないというもっともな理由がある。ただし、この憲法解釈令では、国会調査権を認定しつつも、権力分立と抑制・均衡の原則に基づいて対象や事項に制限があるとし、法律で適切な手続きを規定すべきとされていた。
にもかかわらず、今回の法案は実質的な討論が不十分なまま成立し、国会軽視罪の構成要件や国会調査権の対象範囲が不明確である。さらに、総統の国情報告で議会からの質疑応答義務を創設したことも問題であり、これは運用次第で台湾の憲政体制に大きな変化をもたらす可能性がある。
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