司法制度の政治問題化が懸念、台湾政治に危機感 多数派の専制を防ぐはずが、民主主義の不全に

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司法制度をめぐり政治的対立が深刻化する台湾。権力分立が岐路に立たされている。

台湾の立法院で審議が進んだ国会改革法案
台湾の立法院(国会)では、2024年5月に与野党の乱闘まで起きた法案が通過していた(写真:Bloomberg)

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※本記事は2024年11月30日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

台湾世論を分断し、大規模な抗議運動や議会での乱闘まで起きた「法案」に司法判断がくだった。

台湾の憲法法廷は立法院(国会)で野党が主導した国会改革法案について10月25日に一部合憲、一部違憲の判決を下した。7月には一部条項の適用停止の仮処分を先に出していたが、法案が立法院を通過して約5カ月経って司法判断がようやく下された。

国会による監督権限範囲を明確に

問題となった国会改革法案は、立法院による調査権や政府機関の人事同意権の強化のほか、総統による立法院での「国情報告」と質疑応答の定例化、答弁者の回答拒否・反問の禁止、そのほか虚偽答弁などを国会軽視罪とする刑法の新設が盛り込まれていた。国会の権限を拡大する内容で、政権与党は違憲だとして反発し、司法院に違憲審査を求めていた。

10月に下された判決の核心は、立法院の行政権に対する監督権限の範囲を明確に限定したことにある。具体的には国会改革法案で焦点となった項目にそれぞれ以下のような判断が下された。

まず総統の「国情報告」については、立法院が総統に対して即時または期限付きの回答を要求することは憲法上の権限を逸脱すると判断され、これを任意のものと位置付けた。また、公務員への質疑では反問の禁止規定について、質問形式での応答は通常の質疑の範囲内として「反問」には当たらないと限定解釈したうえで合憲とした一方、出席拒否や反問行為、虚偽答弁に罰則を課すのは違憲とした。

人事同意権については最も合憲性が高く、公職候補者への資料提出要求は指名元機関への拘束力がないため合憲とされた。ただし、同意権は「同意か否か」の判断に限られ、質問回答の強制や宣誓要求、その違反への過料は違憲とされた。また立法院は、宣誓拒否を理由に審査を拒否できないとされた。後述するが、過去に公務員人事が立法院の混乱で空転したことをふまえての判断だ。

調査権については、委員会設置は認めつつ、独自調査チームの設置や処罰規定は違憲とした。そして立法院の調査権は「法律案、予算案等の憲法上の職権行使に関わる特定議案との重大な関連性」がある事項に限定された。つまり、予算案や具体的な法案などと直接関係がない限り、野党が政権追及のために行政上の問題を調査することはできない。

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