台湾経済の中国依存は過去の話?「脱中国」の背景 中国の収益性はなお高いが顧客の望み逆らえず

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中国経済がなければ繁栄はないと中国依存が指摘され続けてきた台湾だが、その「常識」は変わりつつある。

台湾最大手の航空会社・チャイナエアライン(中華航空)の貨物機
台湾最大手の航空会社・チャイナエアライン(中華航空)は半導体や電子部品など台湾主力産業の輸出を支えている(写真:Bloomberg)

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台湾経済の中国離れが加速している。対外投資に占める中国向けの比率は、2019年の38%から今年1-10月には8%にまで低下した(下図1つ目)。輸出に占める中国・香港向けの比率も、2020年の44%から31%(今年1-10月)と大きく低下している(下図2つ目)。

対外投資の脱・中国の流れは、この15年ほど続く傾向だ。台湾の対中投資は2010年に146億米ドル(同年の対外投資額の84%)のピークに達したあと、減少に転じた。1990年代初頭から約20年続いた中国ブームを経て、大陸に出るべき企業の大多数がこの頃までに進出を果たしたこと、2000年代半ば以降、中国での生産コストが上昇したことが、その背景だ。

アメリカのシンクタンクCSISが2023年11月に台湾企業610社を対象に行った調査(Scott Kennedy and Andrea Leonard Palazzi, “Diversifying, Not Decoupling: Taiwanese Industry Responds to Geostrategic Risks”)でも、「労賃の上昇」が中国からの生産移転の理由のトップに挙げられた。

輸出での中国依存も低下している

2010年代後半に激化した米中経済対立は、台湾企業の中国離れに拍車をかけた。2017年に成立したトランプ政権は、対中貿易不均衡や自国の雇用喪失を理由に、数次にわたる対中関税の引き上げを行った。米中関係の行方が不透明さを増すにつれて、輸出拠点としての中国の優位性はさらに低下した。

台湾・経済部(経済省)の「輸出受注海外生産状況調査統計(外銷訂單海外生產實況調查統計)」から、台湾企業が受注した輸出オーダーをどの地域で生産しているかをみると、中国の比率は2016年の50%をピークとして2023年には38%にまで下がっている。対中投資の主力セクターであるIT製品製造業では、中国での生産比率が同時期に90%から67%に低下した。

代わって新たな輸出拠点となりつつあるのが、ベトナムを中心とするASEAN諸国だ。上でみたCSISの調査および経済部の調査でも、中国からASEANへの生産移転が進みつつあることが確認できる。量産拠点のシフトに伴い、輸出面での中国依存も低下に転じた(1ページ2つ目図)。

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