混乱する台湾内政で「裏切り者」と支持者から罵られる政治家がいる。彼をめぐる経緯をみると日本も学ぶべき政治のあり方も見えてくる。
台湾内政の緊張が続いている。先月から野党の中国国民党と台湾民衆党が提出した立法院(国会)改革法案をめぐり、議会では乱闘騒ぎが相次ぎ、立法院周辺で大規模なデモが起きた。
これら抗議活動は「青鳥行動」と呼ばれている。その経緯や争点については6月6日配信の劉彦甫氏の解説コラム「やはり中国が影響力を行使?悩ましい台湾政治」に詳しい。
怒りの矛先を向けられた民衆党の政治家
筆者は日本にいたため現地の様子を直接観察できなかったが、報道やSNSの発信のほかYouTubeに投稿された現場の映像をみる限り、若い世代が積極的に街頭に出て声を上げたことがよくわかった。また台湾社会には若者たちの今回の行動を支持する雰囲気があり、シニア世代で現場に駆けつけた人の姿も見られた。台北市の地下鉄はデモ参加者が帰宅できるように終電を増便したという。
2024年1月の選挙の結果、台湾では民主進歩党(民進党)の頼氏が総統に当選し、5月20日に就任した。一方で議会では定数113のうち民進党の獲得議席は51にとどまり、国民党が52議席を獲得して第1党となり、8議席を獲得した台湾民衆党がキャスティングボートを握る構図となった。
今回街頭での抗議に繰り出した人々の中には、民衆党支持者が含まれていたとの報道もある。議会を取り囲んだ人々の姿を見て、国民党や民衆党は今後の党勢拡大のために何が必要か、再考を迫られたはずだ。
ただし、国民党と民衆党はデモの声に押されて法案を取り下げず、国会改革法案の肝である「立法院職権行使法」および「中華民国刑法」の修正案が5月28日に可決された。国民党および民衆党は民進党から政権を奪取することを目指す政党である。
野党両党はたとえ強い抗議を受けようとも、行政府に対する立法府の権限を強化する改革を強行することによって「別の民意」の支持が得られるとの目算があったといえる。野党がそのような発想をするほどに、現在の台湾の世論は大きく分断されていると見ることもできる。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら