台湾社会では中国との対立軸だけで政治を判断することにうんざりする人も増えているが、いたるところに中国ファクターがあって悩ましい。
台湾では5月に民進党の頼清徳新政権が誕生した。しかし、内政はすでに混沌としている。
5月28日に立法院(国会)では多数派を占める野党・国民党と台湾民衆党の賛成多数によって国会改革(権限拡大)法案が通過した。同法案には立法院による調査権や政府機関の人事同意権の強化のほか、総統による立法院での国政報告と質疑応答の定例化、答弁者の回答拒否・反問の禁止、そのほか虚偽答弁などを国会軽視罪とする刑法の新設などを盛り込んでいる。
与党の反対や市民からの抗議が続く
法案について与党・民進党は立法院の権限を不当に拡大して憲法違反の内容も含むなどと主張し、反対した。また同党の支持者を中心に立法院の周辺では市民による抗議デモが行われている。
法案が通過した日には7万人を超える人々が立法院に集まり、台湾各地の主要都市でも数万人がデモを行った。立法院のそばを通る青島東路という道の名前からネット上では抗議デモの呼びかけに隠語として「青鳥」が使われ、青い鳥が幸福の象徴でもあることから「青鳥行動」という名前が浸透した。
市民による抗議が続く中、行政院長(首相)は法案の再審議を求めるとしているが、野党が過半数を占める立法院での修正は望みづらい。司法院(最高裁)での違憲審査が今後の焦点となる可能性が高い。
民進党や抗議する市民は同法案の内容だけでなく審議過程が公正でないことを問題視する。複数の条文や細かい規定について実質的な審議がなされず、次々と強行採決にかけられ、それを阻止しようとする民進党の議員が国民党などの議員と乱闘する事態が相次いだ。
特に問題視されているのは国会軽視罪だ。どのような発言を虚偽とみなすかなどの線引きが曖昧だとの指摘が相次ぐ。違反行為が明確でないことから恣意的に議会多数派が答弁者を虚偽だと断じて罰金など処罰を科すのではないかとの懸念も広がる。
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