トランプ大統領の返り咲きで台湾情勢が不安定化し、戦争が起きないか懸念も広がる中、情勢が案外と落ち着く可能性もあるかもしれない。
アメリカでトランプ前大統領の4年越しの再選が決まって以来、新政権の外交政策をめぐりさまざまな予測と議論がなされている。それは、前回のトランプ外交を振り返ると、同盟国も競争相手も、さらにはその狭間にある国々も、来年1月以降に起きることに懸念を抱かざるをえない記憶があるからにほかならない。
しかし、トランプ次期大統領の最大の問題点はその予測可能性の低さにあり、これから起きうることを正確に予測することは難しい。そのため、どの国も予測しうるいくつかのシナリオに備えつつ、当面は新政権の方針を見極めることになろう。
アジアに影響する関税やウクライナ支援停止
中国と台湾、そして台湾海峡情勢も例外ではない。トランプ氏の外交政策をめぐる議論のなかで、対中政策がいかなるものになるか、その結果米中関係がどのようなものに変わっていくのかは最も大きな議題の一つである。
そして、その対中政策によって対台湾政策は規定され、台湾海峡情勢が全体としてどのような方向に動いていくのかが見えてくるだろう。そこで、本稿では本連載に掲載された小笠原欣幸氏の論考(「トランプ当選、台湾の『悪夢』となる危険な兆候」)を引き継ぎつつ、この2週間に英語圏や中国語圏でなされた報道や分析を参考にしながら、アメリカの政権交代を控え、アメリカの対中国・台湾政策や台湾海峡情勢にはどのような論点が生起するのかを整理してみたい。
まず、今回の選挙キャンペーンのなかで主張されたトランプ氏の対中政策は、関税引き上げを中心とする厳しい経済政策をとるというものだった。トランプ氏は中国製品すべてに60%の関税を課すと主張していた。
そのほか、中国に限らずどの国にも、対米貿易黒字や通貨安に対する制裁関税を課す可能性がある。他方で、トランプ氏は「競争が必要」だという論理で、かつて脅威だとみなしていたTikTokの利用禁止に反対の立場を示し、自身のアカウントを開設したりもした。
インド太平洋の安全保障について、トランプ氏は選挙戦のなかで詳しい方針を表明しなかった。しかし、トランプ政権が発足後にウクライナ戦争に対する支援を停止すれば、それがアジア諸国、特に台湾社会の心理に与える影響は看過できない。
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